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父たち 4
「婚約したんだろ?指輪の一つでも買ってあげなさいよ」
「おぉ!そうだ!ちゃんとそれなりのを買うんだぞ!?」
「え…買っていいのかな…?学生でそれはお…重くないかな…?」
「いいに決まってるだろう!私だって学生時代はフィヲに何十個も指輪を送ったものだ!」
「全部送り返したけどなぁ…」
フィヲは呆れたようにため息をついているが、指輪はずっと考えていた事だったので思わずレンシアを見てしまう。
しかしレンシアは戸惑っているように侯爵を見上げている。
「あ…あの…俺はその…
仰られるように、あまり素行の良い人間とは言えません…
皇帝家に盾をつくような行動を取っていると言われても仕方がないような…
それなのに…イオンさんと婚約だなんて…
お許し頂けるのでしょうか…」
レンシアは自信なさげな声で呟いていて、その辛そうな横顔を見ているとこっちまで泣きそうになってしまう。
イオンが何かフォローせねばと口を開きかけると、侯爵に肩を掴まれて制されてしまう。
「レンシアくん。確かに君を危険人物と考える者も多いだろう。
国家転覆を企てている、という噂もある。
我がリチャーデルクス家は“こう見えて”皇帝直属の貴族である十家。
イオンもいずれは家督を継ぎ、十家の侯爵として立つ事になるだろう」
侯爵の言葉にレンシアは低頭したまま頷いている。
「だからこそ、イオンには自分の道は自分で決めろと言って育てている。
私はイオンの決めた事は“信頼”すると決めているのだよ。
そうだな?フィヲ」
「うん。イオンが選んだんだ、それは責任は自分で負うという覚悟の上での事だろう。
そうなれば相手が誰であろうと僕らが口を出す権利はないよ」
2人の言葉に、レンシアは怖々と顔を上げている。
イオンはその横顔を盗み見てしまって、彼の紫色の瞳が少し濡れてきらきらと光っているのに気付いてしまった。
きっと凄く、覚悟してここに来てくれたのだろう。
そう思うとなんだか胸がいっぱいになって、イオンはなんだか泣きそうになってしまうのだった。
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