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親として 1
「も…もぉ…こんなんかいぞくだよぉ……」
イオンは顔を真っ赤にしてヘロヘロになってレンシアの膝の上に突っ伏している。
侯爵に浴びるほど酒を飲まされて潰れかけている彼を好きにさせながら、レンシアは小さく息を吐き出した。
リチャーデルクス家の屋敷に一緒に来て欲しいと言われた時は、
死ぬほど罵倒されて、下手したら一歩も敷地内に入れて貰えないんじゃないかとすら思ったけど
使用人達も彼の両親もどうやら歓迎してくれたらしい。
豪快に上機嫌に笑っていた侯爵は、風呂入ってくる!と元気に飛び出していってしまい
部屋はようやく静かになった。
レンシアはお酒の入ったコップを持ったまま、イオンの頭を撫でてちょっとふわふわとなりながらも幸せに包まれていた。
「ありがとう…イオンさん…」
十家の嫡男との婚約なんて次期皇帝の次くらい大変な事だと思うのに、なんだかあっさりと許されてしまったし
それでも侯爵のアルハラから守ろうとイオンは率先して飲んでくれて、
そのどれもがレンシアにとって嬉しくて、幸せだった。
「しめしめ、バッハくんいなくなったな?」
ドアの方から声がして振り返ると、宴会が始まると同時に消えていたフィヲが2人の元へと近付いてきた。
そしてソファの向こう側からこちらを見下ろし、潰れているイオンを見るとくすくすと笑っている。
「やれやれ。ちょっと猪突猛進気味な所は侯爵に似てしまったようだね」
侯爵夫人であるフィヲは、穏やかに微笑んでいて
その眼差しはイオンに似ているようで、レンシアは思わず見つめてしまう。
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