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親として 2

「…イオンはね、昔から大層聞き分けが良くてね 我儘を言われた事なんて殆ど記憶にない どれが良い?と聞いても、どれでも良いよ、というような子でね、主体性が無さすぎるのかと悩んだくらいだ」 フィヲは話しながらも、レンシアの隣に腰を下ろした。 そしてテーブルの上に山積みになっている酒瓶を取ると、空いているグラスに酒を注ぎ始める。 「だからね…さっきは責任がどうとか言ったけど この子が“これが良い”と選んだものなら尊重してやりたいとずっと思っていたんだ。 これはただの親として、ね バッハくんもきっと同じ考えだと思う」 フィヲの言葉を聞いて、レンシアは泣きそうになりながらイオンを見下ろした。 「…俺は…沢山イオンさんに助けて頂きました… 俺が世間でなんと言われようと…どんな目にあっても、…ずっと信じてくれて…守ろうとしてくれて… 最初からイオンさんは…俺の事を、“大天使の生まれ変わり”でも“次期皇帝の婚約者”でもなく…“俺”として見てくれた。 そしてそうじゃなくなってもずっと同じように接してくれた… そんな事を、してくれた人は…初めてだったのです…… だから…俺はこの人のためだったら……」 この人が“必要”なのは、明らかに自分の方なのだとレンシアは強く感じていた。 イオンは酔い潰れて、レンシアの腹に抱き付くようにして寝てしまっている。

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