3 / 16
序章 - 3
※ここから、寛智の説明が入ります。めんどくさかったら飛ばして下さい。
「王道転校生は、超美形で家庭の事情で王道学園へ転校してくるんすよ。そして、学園理事長と親戚関係にあります。して、ここの学園にホモとかバイとかいて危険だから、と理事長によりもっさりした鬘と瓶底眼鏡の着用を義務付けられるんす。そして転入生は学園内の案内のために現れた副会長の笑顔が偽物だと見破り気に入られキスされてまうんや。そして、教室でホスト教師に気に入られ、隣の席の爽やかスポーツマン君を落とし、その後、寮の同室者(一匹狼不良君)と和解。その日の昼、副会長が気に入った転入生を見にきた生徒会と食堂で遭遇します。そして主人公の外見をバカにした会長につっかかり、今まで自分にそんな反応をする生徒がいなかったためか主人公の新鮮な反応を気に入りキスされ殴るが、何故か気に入られてしまう。そのときに瓜二つの双子を見分け、無口ワンコの不自由な日本語を理解したりというイベントをこなし全員に気に入られる。あ、チャラ男の場合は、 学園の頂点である会長を殴った事が面白いと気に入るってことになります。そして転入生はもっさりした鬘と瓶底眼鏡により、オタクもしくはマリモと生徒から疎まれることになるんす。生徒会と行動を共にするうちにそれぞれの親衛隊による制裁を受けるが、誰かに助けられる。そのうち、主人公が実は美形だと全校生徒にバレ、親衛隊ができちゃうんです。最終的にほとんどの場合は主人公と(俺様orヘタレ)会長がくっついちゃうんすよ。また、それにオプションとして会長が族の頭・その他役員は族の幹部、主人公は以前族つぶしまがいの事をしていて会長が探している、という設定もつけるとこもありますねーw以上っす!」
……全員呆然。
僕がひとつ思ったこと。
現実はそう簡単に事は運ばねえよ、だ。
王道学園のトップってバカなの?逆らっただけでとか笑顔指摘されたりするだけで好きになるとか、単純すぎるだろ。
パン、と手を叩く音がして、我に返る。
「一旦解散。お前達は授業に行け」
遅れたらどうなるか分かってるよな、と黒い笑みを漏らす爽さんにぞぞ、と寒気が走る。
時計を見ると、あと5分で午後の授業が始まることに気づいた。ちなみに、食堂と教室まで歩いて10分かかる。
「沙羅たん一緒に……っていねぇ!?」
沙羅たんはいつの間に行ったのか姿がない。
「歩たん俺と一緒にイカナイカ? って待って歩たんw置いていかないでチョンマゲwww」
寛智を置いて僕は授業に遅れないために必死に走った。
…………
放課後。
僕ら3人は寮に帰るために廊下を歩いていた。
僕ら奨学生は成績さえ良ければ授業行かなくてもいいのに、爽さんが怖いからいくのよー。
まぁ、この学園60分の7時間だし教科も多いから、僕は出ないとテストで詰むんだけどね。
そんなこんなで寮に着いたのは良いけれど、この建物もまた大きい。全校生徒のお坊ちゃんたちが住まなきゃいけないからだろう。
部屋は奨学生、生徒会、風紀が一人一部屋で、それ以外の一般生は二人で一部屋となっている。
一階がいわゆるスーパーのようなところで、2階から7階が寮。それぞれの階にちゃんと休憩スペースや自動販売機も設けてあるのだからすごく恵まれた空間なわけだ。飲み物の値段はくそ高いが。
「こんちゃーwww」
「……ちわ」
寛智は入り口に立つ警備員に挨拶しながら中へ入る。僕は控えめに、沙羅は会釈だけ。
中の装飾も豪華で、「奨学生で良かった」と何度も思う。僕達は最上階なので、階段ではなくエレベーターを使う。てか、坊ちゃまの中ではたして階段使ってるやつはいるのだろうか。
エレベーターは酔うから、と沙羅たんがおっしゃるので7階まで階段を使う僕たちくらいしかいないのではないか。てか、毎度のことながらキツいっす。
「ついてくんな」
僕の心中を察して毎回そう言ってくれる(ように聞こえる)のだが、僕のラブパワーが肉体を超えるためこんな階段なぞ、とるに足らん!
どごぞの寛智とやらの「お先にーw」といってエレベーターに乗る薄情さに怒りを覚えるわ。
「ふぅ、着いたぁ……」
毎日この階段上り下りしているせいか、体力が付いてきた気がする。沙羅たんは慣れているのか、疲れた様子を見せない。
「さーって、準備して僕の部屋集合な」
大きく伸びをして、そう沙羅たんに告げると、部屋の鍵を開けて入る。
僕ら1年の部屋は固まっているので、3人とも部屋が近い。僕の部屋の隣は寛智で、通路を挟んで僕の部屋の前が沙羅の部屋となっている。
「あちー」
僕は部屋に入ると早々に制服のズボンを脱ぎハンガーに掛け、シャツ等を洗濯機に入れ、パンツ一丁でソファに寝転ぶ。
今は初夏だが、なかなかに暑い。しかも階段を上ってきたのだから、汗がだくだくだ。
僕はシャワーを浴び、白シャツとジャージのズボンをはき、ソファに座って待つことにした。基本的に家具は備品なので苦労することはないのだよ、ワトソン君。
テレビを観て時間をつぶしていると、ほどなくしてインターホンが鳴る。僕は返事をして、のぞき窓から相手を見ると、何やら紙袋を抱え、満面の笑みを浮かべる寛智がいた。ものすごく開けたくない。
「その荷物、何?」と、小さくドアを開けて隙間から返事をする。
「俺の萌です!w」
キリッと言われたので、無言でドアを閉めた。
「やめて! 開けてくんなしぃ! 俺がチョーシに乗りました、すみません!」
何やら必死に叫んでいたので、開けてやった。僕ってば優しい。
「ふぅ……ひどい目にあったぜwww」
「邪魔」
いつの間に来ていたのか、沙羅たんは寛智を押しのけ、「お邪魔します」と先に僕の部屋に入った。
「沙羅たん酷いわん」
「早く入れ」
泣き真似をする寛智に冷たく言い放ち、僕は部屋に戻った。
「先輩たちは?」
「少し遅れるってさ」
僕の問いに、ソファにドカッと座り、だるそうに返事をする沙羅たん。来る度にそこに座るので、もはや定位置となっている。
「それ、昨日作って余ったやつだから処理しといて」
なんだと? スイートポテトではないか!
沙羅たんの手作り……わざわざ持ってきてくれたのに、その素直じゃない言葉……僕は萌死しそう!
「歩たん、すごい変態の顔になってるジャマイカwww」
「おい、僕を差し置いて沙羅たんの手作りに汚い手で触るな、穢れる」
「おぅふwなんて辛辣ぅ!www」
沙羅たんは料理はできないのに、お菓子作りは得意なんだよね。僕も大して作れるわけではないから、だいたいハイスペックな寛智が作りに来てくれる。
沙羅たんのご飯は爽さんが作ってくれるから、問題なし。
沙羅たんに「キメェ」とか冷めた目で見られても、僕は涙を流しながらこのスウィーツをいただくのだ。チョーウメェ。
「待ってw 俺の分無くね?w これいじめだよねw? 沙羅たんは二人に持ってきたんだよね?w 俺の分は?w 歩たん、俺の分は?w やめて、もう最後の一個じゃん!w あ、あぁ……俺のがぁーッ!」
何やら寛智が騒いでるが、関係ないね。これは僕がもらったのであって、寛智の分があるなどとは……
「寛智にも渡せ、アホ」
沙羅たんの一喝で、僕は泣きながら寛智に最後の一個を渡したのであった。オヨヨ。
ともだちにシェアしよう!

