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序章 - 4

……… 「ということで、明日萌を見に行かないか?」  あの後、爽さんと翔先輩が来て、すぐに上映会が始まった。その内容は、王道学園とやら。  なるほど、これが王道か、と言葉で言われるよりも、実際に見ることで納得できたのは良かったが、沙羅は顔を真っ赤にして逆上せるし、寛智は叫び声を上げるので、爽さんや僕みたいに終始じっくり見ている人にとっては邪魔だった。  ちなみに翔先輩はぽかんとして見ていたよ。  ま、客観的にその光景はカオスだっただろうけれど。  観終わった後の寛智の言葉が先ほどの言葉。  こんな厄介なヤツと自分から絡みに行くなんて、僕はごめんだね。 「この学園、荒れるよ」 「ほら、見て」ともめている僕らに翔先輩は紙を見せてくれた。  そこには、銀のサラサラとした髪、灰色の瞳の美少年が映っていた。 「明日来る転校生なんだけど、学生証は君の言うマリモだし、他の生徒会員は知らないんだ」  教えてくれるのは良いんだけれど、それをどうやって知ったのだろう、とか聞くのはやめてくれ。話が進まないから。 「メメタアwww」  おい、寛智。もしかして僕の思考を読んだのか?  爽さんは何かを考えているのか、険しい顔で虚空を見つめている。 「彼の性格は分からないけど、設定はまるっきりそのアニメで見た子だから、あまり深く関わっちゃダメだよ」  「特に沙羅」 と、翔先輩は沙羅たんを指差す。彼も彼で分かっているのか、小さく頷いた。  何故かこの3人にも謎な部分があるけど、僕はもう少し仲良くなったら聞こうかな、と思っている。  だってまだ会って2ヶ月だし、もうすぐ体育祭も始まるし……。あ、今のは関係ないね。 「明日行くのは勝手だけど、授業にあまり遅れるなよ」  爽さんはそれを言い残して帰ろうとしていた。僕ら行くの知ってるんですか? 「まあ、行くって言っちゃったし」  僕は溜息混じりに了承してやった。こいつは断っても諦めない、今はそんな奴だと思ってるから。決して、沙羅たんの写真が欲しい訳では無い。 「沙羅たん、朝弱いでしょ? 明日学校で何あったか話すよ」  僕、カッケー。  いや、何がかっこいいか自分で言って分からなくなったけど、沙羅たんのぽかんとした顔は大好物です、はい。  「ちょろいな」とか呟いているそこのオタク、後で殴らせろよな。 「明日の時間は?」 「6時30分に廊下に出といてくれお!w」 「はいよー」  僕は朝早いなーとか思いながら返事をする。 「お、俺は……」 「こいつ起きないだろうから、先行っていいからな」 「分かんねーだろーが」 「はいはい。んじゃ、長居してすまなかったな」 「ちょ、聞いてるのか?」  はいはい、と言いながら沙羅を連れて、今度こそ爽さんは帰っていった。沙羅たんの「お邪魔しました。歩、おやすみ」という小さな声はもちろん聞き逃さなかったよ! 「んじゃ、オレも帰るね。明日気をつけて行ってらっしゃい」  翔先輩は心配そうな顔をしながら帰っていった。  ……僕にひとつ解せないことがある。 「何故僕のお気に入りには必ず彼氏がいるんだぁあああ!」 「ちょw歩たんwww僕ちんに言わないでよねっ!www」  ツンデレっぽく言われても、萌えんわ。 「つか、君は帰んないのか?」 「えぇっ!?」  そんなマスオさんばりに言われても。 「今夜オイラをと、め、てっ?」 「帰れ」 君、部屋隣だろうが。 「歩たん酷い……っ。明日ちゃんと来いよ! 風呂は入れよ! 歯磨きしてちゃんと寝ろよ!」  君のキャラ、安定しないなー、と総スルーしてたら、泣きながら帰って言っちゃった。ざまぁ。  ま、見に行くだけだし、同じクラスでもあまり関わらないようにしようと心に決めながら、さっさと風呂に入って寝ることにした。ちなみに今夜中の2時。明日起きれる気がしねー。  ……次の日の朝、案の定、沙羅たんは起きなかった。

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