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これが王道ですか - 3
………
「こりゃ、授業間に合わんなw」
すでに鍵を開けて僕らを待っていた(開けた方法は内緒よん♪by寛智)寛智が時計を見ながらそう呟く。
僕、疲れすぎて声が出ませんぜ。
「とりあえず昼まで時間潰すか。アイツに会いたくねえし」
あんたは大丈夫か、と一応心配してくれる沙羅たんが好きです。
「ひーるイベ!w ひーるイベ!w」
「さっきから昼イベ言ってるけど、何だそれ」
「とぅフフフフハフフフフフハフ」
「キメエ」
奇妙な笑いに僕と沙羅たんは2メートルくらい離れる。
「ま、昼になってからのお楽しみよw」
………
ということで昼休み。僕達は学食へと足を進めている。何故ならば、今日は寛智の奢りだからな。フハハハ。
「お昼奢るからこの子豚の為に一緒に見てくださいお願いします何様王子様お姫様」とか言うから、仕方なく(強調)付いていってやっているのだ。別に昼飯代が浮くからとかじゃないよ、決して。
「ここにしようぜ!w ここは生徒会席に近いのに死角になっている場所なのだよ!」
と自慢げに語っているお馬鹿を放置して丸テーブルに座る。
「ハンバーグ」と僕。
「サンドウィッチ」と沙羅たん。
「ぐすん」
あらら、寛智ったら拗ねながらタッチパネルをいじってるわ。
僕らはお昼休みに入る前からここにいるから、注文して待っていると徐々に人が増えてきた。
ガヤガヤしているが、いつもみたいに「沙羅さんこんにちわブヒヒ」とか無い。これも、ここが死角になっているからだろう。
便利だ。今後はここの席を使おう、うん。
料理がようやく来る。ファミレスとかでも「ありがとうございます」と言う人は世間でも少ないんじゃないかな。言ってくれると嬉しいのに。
もちろんお礼は怠らない。沙羅たんは会釈だけど。寛智? 誰それウマウマ。
「酷い。あたいはいつも言ってるのに……」とか聞こえた気ガス。
「きゃああああああああああああ!」
なんだなんだ。突然悲鳴を上げられてビックリしたんですけど。
「マリモがぁ……キターーーッ!!!」
「うるせえ」
そうだそうだ沙羅たんの言う通りだ。マリモにバレるだろうが!
「橘様、今日も笑顔が麗しい……」
「あ、あいつG組でも一番の不良……っ! こここ、殺されるぅっ!」
「な、なにあのオタクっぽいモジャモジャ頭! 橘様に馴れ馴れしくしないで!」
あいつらが来た途端罵声と嬌声がやかましいわ! てかオタクをなんだと思ってる! 見た目根暗=オタクちゃうぞ!
僕らがご飯を食べている間に3人は生徒会席の近く、僕らから見える席に座った。マリモの声ってやかましい空間でも響くのね、凄いねー(棒読み)
「うぷぷぷぷwやはりオムライスか。王道やなwww」
そう興奮しながら、寛智は自前のカメラを手に持ちいつでも撮れるようにしている。やめろ君それ盗撮やで。
「あそこの生徒会用の席以外だったら、どこの席でも座って問題ないんだよ」
なんてサワヤカ君はマリモに説明していた。
そして、あやつらが注文してから食事が終わるまで観察して分かったこと。
そこの二名、まりもが好きなの面に出しすぎ。そしてお互い嫌い合っているのが分かる。恋敵ってやつですね。
そしてまりも、お前鈍すぎ。「ソースほっぺに付いてるよ」ペロッ(舌でなめる)「おう! ありがとう!」とか、お前友達はそんなことせんで! お前絶対ホモやろ! 僕会って1日の友達にそんなことされたら鳥肌もんだわ! その後絶対的その子と距離置くわ!
そんなもんが好物な寛智嫌だわー引くわー引かないけどー。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
うるっっっっせーーーよ。お前ら女みてえな声出しやがって!
沙羅たんとかあからさまに舌打ちしてるし。
「生徒会ktkr!!」
おまいもやかましいわ。
「そ、そんな蹴らなくたって……っ!www オラ感じちゃ……い、やめてっ! いたいっ痛いやめて!」
沙羅たんと割と本気で寛智のすねを蹴ったらさすがに黙った。
流石に僕も生徒会は知ってるよ。知らないヤツいたらこの学校の奴じゃないでしょ。
えっと、生徒会長の鷹島 光 、副生徒会長は前に紹介した通り飯田透、会計が翔先輩。……そう言えば来てないなー。そして書記が三沢 和人 、山中 真夏 と真冬 。って人数多くない?
寛智風に言うと、俺様生徒会長、エセスマイル副生徒会長、ワンコ書記と双子書記。
翔先輩がいることで少し王道とは違うらしいんだけどね。
ぶっちゃけ容姿説明すんのだるい、需要ある?
「あ、朝日!」
エセスマイルがマリモを見つけるや否や抱き付く。うっわーキメー。
「あ、透! お前も来てくれたのか!」
「何あのオタク! 馴れ馴れしく飯田様に抱きついて!」
「信じらんない! 離れなさいよ、飯田様が汚れるわ!」
キャンキャンキャンキャン高飛車うるせー外野だな。
とりあえず、ちゃんと冷静に見てみなよ。どう見ても副会長の方から抱きついてんじゃんか。
「こいつか。透が言っていた気になるやつとは……」
会長の自信たっぷりの言葉、上から目線に聞こえるのは僕だけじゃないはず。てかメッシュとか格好悪いから止めろよー校則違反だぞ。
てかマリモ固まってるね。驚きかな。それとも、アニメで観たあの設定持っているのかな。
「ふん。こんなオタクくさいやつが好みとは貴様も落ちたな」
好きな人をこう散々言われると僕は嫌いになります。
「貴方も朝日さんの魅力に気づかないとは……」と鼻で笑う副会長。
「僕山中真夏!」
「僕真冬!」
一卵性のよく似た(性格も含めて)双子が、巨人のようなデカい書記男の後ろに隠れ
「「どっちがどっちか分かる?」」
はん。右が真夏だ。
「えっと……右が真冬さんで左が真夏さん」
「「えー凄い当てたの君が初めてー!」」
………………ち、外したか。
「てか……みんな分かんない……のか」
小さな呟き。僕は何て言ったのか分かりませんけど。
その言葉に反応した大男書記。
「い……な………、った?」
「あ、いや何でもないぞ!」
「「君言ってること分かるんだーすごーい!」」
わきゃわきゃし出した元凶たちよ、周りは悲鳴で溢れてますぞ。
ちなみに不良くんと爽やか君が空気になっていることも僕は見逃していないぞ。
「おい貴様」
「貴様じゃねえ! 新島朝日だ!」
貴様とか……ぷぷ。
「いつ聞いても生徒会長の二人称が貴様とかうける。だよね、沙羅た……」
沙 羅 た ん が い な い 。
何で気づかなかった、僕!
「寛智、沙羅たんどこ行ったか知らない?」
「生徒会が来たあとすぐに「帰る」って出ていったのだよ」
オーノーマイコーラ。
寛智は終始カメラを回している。最近はカメラにビデオ搭載されていたり、その逆もあったりするから、写真を撮っているのか動画を撮っているのか分からない。
まあ、どっちでもいいがな。興味無い。
「ほぅ……俺様に指図するとは気に入った」グィと顎を掴み自分に向けさせる。「な、何だよ」
よし、今がチャンスだ。
「行くよ」
扉までもちろん身を屈めながら向かう。生徒会以外座ってるから目立つもの。
「あーー歩!」
ナゼキヅイタ。完全にお前の後ろ通ったで。
しかもいい雰囲気のところを……。
ほら、生徒会長があからさまに舌打ちしたよ!
ヤバい、逃げるぞ。
テーブルの間を疾走。たまにぶつかりそうになりながらも何とか扉までたどり着く。
「何で逃げるんだよ!」
「そりゃ逃げるわよ」
そう呟きながら、扉を閉める。
完全に閉まる間、マリモがこっちに向かってくるのが見えた。
このまま1人で教室に逃げてもマリモに捕まるだけだ。
僕は廊下を小走りしながら考える。
何だか嫌な予感がする。
今までの……この2ヶ月過ごしてきた生活が崩れていくのを感じた。
何故、何故だろう。凄く不安だ。
「沙羅たーん! 沙羅ーどこ?」
外はどんより曇っている。今朝は晴れていたのに。
これは僕の気持ちを表しているのだろうか。それともこれからの未来を予測しているのだろうか。
僕は風紀室へと向かった。
………
「爽さん!」
ノックもせずに勢いよく入ってしまい失念したが、すぐに追い出し椅子に座る人物を呼ぶ。
「どうした?」
爽さんは驚いた様子だったが、静かな声で僕に問う。
「あ、あのっ。沙羅たん来ませんでしたかっ?」
「沙羅?」
息を荒げながらそう問う僕の言葉に反応したのは、一緒にいた翔先輩だった。
少し考えて、僕に聞く。
「もしかして今日の昼、学食にいた?」
ギクリとした。
「しかも生徒会席の近くで」
的確に僕らの行動を言い当てられた。翔先輩の声が静かだったからかもしれない。
「翔」
「うん。連れてくる」
僕の反応で何かを察したのだろうか。
二人は視線を交わすと、翔先輩は風紀室を出ていった。
何であんなこと聞いたんだろうとか、二人は沙羅たんのこと凄く知ってるんだな、とか考えていると、無性に悲しくなった。
普段の僕なら、2ヶ月で沙羅たんを知るなんて無理だろ、とか思うけどさ。
「野軒」
「は、はい!」
不意に呼ばれ、肩が震えた。いつの間に来たのか、すぐ前に爽さんがいた。
「隣の部屋は仮眠室だ。少し休むといい」
爽さんは僕の頭を撫で、ふ、と笑う。
「疲れた顔をしている。今日の授業はもう体育祭の全体練習で終わりだしサボっても大丈夫だろう」
「風紀委員長がそんなこと言っていいんですか?」
爽さんの言葉にプ、と、吹き出してしまった。
そうか、疲れてたのか、僕。確かに今日は朝早かったしいろいろあったし。
「じゃあ、少し寝させて貰いますね」
「起こさないけど」
「ちょ、ヒドいっす!」
今日ようやくちゃんと笑えた気がする。
お礼を言って、隣の休憩室に入った。
中は薄暗いけど整理されていて、中にベッドが4つ。それぞれ周りはカーテンで仕切られていた。
僕はネクタイを取り一番奥左のベッドの下にあるカゴに入れ、靴を脱ぎ、横になる。
何だか保健室で寝てるようでワクワクした。
「おやすみなさい」
僕は意外とすぐに眠りに落ちた。
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