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これが崩壊ですか - 1

 あー、本日は晴天。本日は晴天。  実に体育祭日和であります…………ちっ。  あれから一週間。今日は全く待っていない体育祭だ。  今日のために照る照る坊主を逆さにしたのに、晴れちまった。ファック。 「デュフフフフフフw今日はどんな萌が待っているのかねぇwww」  前回から今日までの1ヶ月。とても。とてもとてもとてもとても長く感じた。  空たんには避けられているのか顔も見ていないし、爽さんと翔先輩はあの日から忙しくなり、それぞれの室から出られない状態。僕は、マリモのおしりを追いかける無能になってしまった風紀委員たちの代わりに、毎日爽さんの手伝いで可愛い子ウォッチング(笑)が出来ない状態。  唯一寛智だけが変わっていないのかもしれない。 「沙羅たん、大丈夫? 少し寝てた方がいいんじゃない?」 「大丈夫」  そして沙羅たん。僕以上に疲れている。何をしているのか教えてくれないけれど。  何故僕の周りだけこんなに疲れているのだろう。  それもこれも全部あいつのせいだ。  いや、“あいつら”のせいだ。  ちくしょう、呑気に笑いやがってムカつく。  開会式という無駄な時間の間、この1ヶ月間で起きたことをかいつまんで説明するよ。 …………… 「あ、歩たん!」  前の章の後、見回り中に寛智と出会った。そういえばお昼以来やな。 「見回りお疲れさんっす!w」 「沙羅たんの写真よこせ」  そういえば貰ってない。 「見回り終わったら渡してやんよwww」  それはくれないフラグに聞こえる。 「ちょうどいい、僕の見回りに付き合え」 「横暴wwwwwwwwww」 「お、今日も見回りか?」  寛智の後ろ首を引っ張り、歩き出そうとすると、せいに引き止められた。 「今日は第2校舎の美術室に行ってみな。いいものが見られるから」  「じゃな」と背を向けて歩き出す誠。  こいつは神出鬼没であまり考えていることが分からないんだよね。  だけど、さっきみたいによい情報はくれるから、今度何か困ったときに聞こう。 「行くぞ、可愛い子のために!」 「おうよw萌のために!wwww」  「だけど襟首引っ張らないで!w苦しい!wわぁ(自分)死んでしまいますわ!www」という言葉が後ろから聞こえた気がしたが、気にしないことにした。 ………………  なん……だと……………!?  美術室の扉を開けたら、場違いなチャラ男がいました。 「………………どちらさまで?」  ようやく、その言葉が出た。  180cmを超える身長に、沙羅たんのような地毛ではなくギンギンに染めたワックスで立てた金髪、耳に空いたピアスの数々。両耳で10コはあるんじゃないか?  チャラ男は僕の言葉に気づいたようで、振り向き八重歯を見せ、笑う。こめかみ近くに赤いピンが2つ差してある。 「オレぇ? (あおい)だよぉ。よろしくねぇ」  イケメンなのか尚ムカつく。 「チャラ男が美術部だと……!?」  信じられん。他の部員皆眼鏡黒髪の陰薄やんか。尚目立つわ! 「いきなり来てチャラ男呼ばわりは酷いなぁ……」  語尾延ばし(技名)によって余計チャラ男に見える。 「見回りご苦労様ぁ」  何だこのチャラ男は! ……てこの言葉何度も言ってる気がする。 「寛智帰るぞ」  適当に会釈して、回れ右する。あいにくチャラ男は苦手でね!……ッフ。 「あ、歩たんw助けておすし!www」  ……あん?人が格好よく去ろうとしていたのに。  僕が後ろを振り返ると、寛智はチャラ男に腕を掴まれていた。わーお。 「いや、こいつ僕知らないんで」 「ちょw待って、ほんと、行かないでぇえええええええ!!!」  ちっ。  何やら懇願してきたので、嫌そうに振り返る。 「こいつの腕、離してもらえませんか?」 「いやぁ、ちょっとオレ君達に用があるんスよぉ」  チャラ男は腕を離し、肩をすくませながら困ったように笑う。 「見回り中なんで、そのあとなら大丈夫っすよ」  しまった思わず敬語になってしまった。というか、本当この人の名前知らないんだけど。知らないはず、ないんだけどなあ。 「いやぁ、それじゃあ遅いっていうかぁ……バレるっていうかぁ……」  そう言ってチャラ男は言葉を濁す。  面識無いのに用があるって何だ? 「のことでぇって言ったら信じてもらえるっスかぁ?」 「是非とも詳しく話してもらえないでしょうか?」 「何その変わりようwwwww」  やかましい。沙羅たんのことを知ってるんだぞ、こいつ。怪しい。怪しすぎる。 「オレぇ、中学の頃ぉ沙羅っちと一緒に生徒会やってたんだよねぇ」  ………………………ファッ!? 「チャラ男生徒会会計ということですね!wウマウマwww」 「おぉぉ、なんで俺が会計だってわかったのぉ?」  ……中学の生徒会も王道かい。  てか、沙羅たん生徒会やってたんだ。意外も意外。 「オレさぁ沙羅っちに借りがあるんだよねえ」 「え?」 「なんでもなぁい」  ボソって何か言った気がするけど聞こえなかったわ。聞き返したけどまーたごまかされたし。  チャラ男はへらへらした顔から一変して真面目な顔つきになる。 「鬼退治、協力してよぉ」 「鬼、退治……?」  ようやく、その言葉がこぼれた。  彼の雰囲気に気圧されてしまったからだ。不覚。 「そ。鬼退治」  また、チャラ男はニコリ、と笑った。  何言ってんのこいつ。 「ちょっとぉ、そこ冷たい目で見るとこじゃなくなぁい?」  てかこいつのノリ嫌いだわ。チャラいし。さっさと会話を終わらせたい。 「学園の可愛い子を守るために生徒会という鬼を倒しに行くんだよぉ!」 「詳しく聞かせてもらえないだろうか」  不思議だなぁ、この人から同じ匂いがする(棒読み)。 「高校に上がってからさぁ、気づいちゃったんだよねぇ」  チャラ男は教室の窓に近づきながら、そう呟く。外は日がすでに沈んでいて、雨ということもあるのかすでに真っ暗である。  他の生徒は帰ったのか。やばいと思って避難したのか。まあ、どちらでもいいか。  雨が窓に打ちつける音がする。静かな空間だから、余計に。  だけど、たしかに聞こえた。 「高等部も、腐ってる」  低い声で。歯を食いしばったようにも聞こえた。 「君達、沙羅っちお友達でしょお?」  振り返り、こちらに笑みを向ける。 「だからぁ協力してほしーなぁ」  なんだよ、へらへらしたと思ったら真面目な顔しやがって。調子狂う。 「その分の責任は取るからさあ」  責任とはナンジャラホイ。話が見えないんだけど。 「マリモが何か関係あるのか?」  だけど、これだけは分かる。  こいつ、ただのチャラ男じゃない。 「違うよお。あれはきっかけであり、好機スよぉ」   思い当たる節があるのはマリモしかいないから聞いたんだけど、違ったみたいだ。  好機? どういうこと? 「今日を期に、必ず学園は本性を表す」  何故だかぎくりとした。今日その片鱗を見たからかもしれない。 「それに気づく人だって絶対いる。この学園が普通の金持ち高校じゃないこともね」  僕は驚いた。口調が変わり、温度のない声がチャラ男から聞こえたから。  あれ、同一人物かよ。 「ほら、敵の敵は味方っていうじゃなぁい?」  チャラ男は笑い小首を傾げる。なぜだか不気味に感じた。 「別に今返事が欲しいわけじゃないの。来週の体育祭が終わるまでに返事をしてくれればいいからぁ」  だけど僕は、とても冷たい笑顔に見えてしまった。 ………  その日、僕らは見回りを終え、爽さんに報告した後、帰宅。寛智はあれから一切話を振ってこなかった。いつもやかましいのに。意外。 ひベッドに寝転がり、ぼーっと天井を見上げる。  何故、僕らなのだろう。  碧という人の言葉を思い出した。  沙羅たんの知り合いらしいけど。なーんか怪しいのよね。  沙羅たんに会ったら聞いてみよう。  それに、寛智が何やら様子がおかしかったけど大丈夫かしら。  ………………。  だぁああああ寝れん!!  ベッドをごろごろしていると、携帯が鳴った。……あん? [今からお届け物を持ってまいります☆]  あ の や ろ う 。  何なんだあのオタクは今何時だと思ってやがる。22時だぞ! まだ大丈夫でしたか、はい。  とりあえず「うい」とだけ送った数秒後にインターホンが鳴った。早いな、おい。 「お届けにまいりましたー!wてへっ☆」  相変わらずやかましい奴やな。  それが逆に安心する自分がいた当たり、複雑な気分だが。 「で、何の用?」 「あっるぇー?w 沙羅たんの写真いらないんですかー?w せっかく持ってきたのになー!w」  うぜえ。 「あと、夕食なり」  若干、本当に若干イラッとしたが、写真と一緒におにぎりを渡されハッとする。  そいえば夕飯食っていない。 「拙者の手作りでござる!w 愛情たっぷりで歩たんの好きな明太子がおかずよん!w」  なんだよ、それ。  じん、と暖かさがこみ上げてきた。 「ありりー? 歩たんついに我が輩にほりたかにゃ?w」 「……違うわ、アホ」  思わずチョップしてしまった。「あうん」とかいう悲鳴、気持ち悪いぞ。だけど、 「だけど、ありがとう」  少しだけ友情が染みました、まる。

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