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これが崩壊ですか - 2

……… 「はあ!?」  次の日の朝、朝のSHLが始まる前。僕はいつもの通り風紀室にいた。  出会って早々に爽さんの台詞が衝撃。 「解雇ぉ!?」 「そうだ」  そうだじゃないでしょ!  さすがに僕は爽さんに詰め寄る。 「いやいやいや。さすがに委員長でもそんな横ぼ……」 「許されるからやったんだ」  けろりと言う爽さんに、僕はがっくりと肩を落とした。  ということは、現在風紀委員は爽さんのみ。僕はお手伝いなので、正式には含まれないのだ。 「な、なんでそんなことを……」 「風紀に無能は不要だ」  資料に印を押しつつ、淡々と申される何様王子様俺様。  ……理由は言わずもがな毬藻だった。  昨日の放課後、僕が風紀室を出た後にやって来た委員が発端だ。懲りずに毬藻を連れて来たんだって。  生徒を平等に扱う義務がある爽さんは、私情で毬藻を出入り禁止にすることは出来ない(どの面下げて来やがった、とか思ったらしいけど)。  余談。沙羅たんは爽さんの机の下に避難したらしい。  ……話を戻すね。だから、爽さんは何も言わなかった。でも、問題は次だ。  委員はその日全く仕事をしなかった。  毬藻に媚びを売っていたのだ。  それにイラついた爽さんはこう言った。「仕事をしろ」と。しかし、風紀は「だって……」と仕事の資料と毬藻をちらちら視線を移し、毬藻は「何でそんなこと言うんだよ!」と何故か反抗しだし、しまいには「お前も一緒に遊ぼう」と言い出す。  困りに三割くらいの怒りを混ぜた爽さんは「ここは風紀の為の部屋と共に、生徒の為の部屋だ。迷惑だから帰れ」と毬藻を一蹴し、風紀には「仕事をしないなら風紀を辞めろ」と辞めさせたらしい。  まあさ、当然の報いだとは思うけれど。 「野軒は普段通りでいいから。ほとんど俺一人でやってたようなもんだし、他に手伝ってもらう人も探したから」  しれっ、とそう返す辺り、この人凄いんだろうな……。 「……で、何だ? 見まわりの時間には時間が早いだろう」  しかも、僕が来たことは予想済みでしたか……。  ほんっっっと、この人凄いや。 「あの、相談があります」 ……… 「なるほどね」  僕は、昨日の碧とのことを話した。  突然会って突然頼まれて正直混乱していてどうしたらよいか分からなかったから。  爽さんは足を組み直すと、 「参加しなくていい」  と言った。 「ダメだ、と言っているわけじゃない」  資料に目を通しながら、そう言われる。  まるで、話はもう終わりだ、と言われているかのように。 「あいつの言う内容は、学園からすると、反乱分子にあたる行動をする、ということ。つまり、バレたらお前の進路に影響がある、と同義だ」  ぎくり、とする。そういえば、将来の夢について爽さんには言ったんだっけか。 「“表に立たなくても”やれることだってたくさんある」  そう言って、爽さんは悪どい笑みを浮かべる。何か考えている顔だ。 「バレなきゃいいんだよ、バレなきゃ」  「何でもな」と爽さんは印鑑を押し終えた資料をまとめる。  何だろう。爽さんってすごく悪役ですね。風紀がそれでいいんですかまったく。 「最終的に決めるのはお前だ」 「……。ありがとうございます」  この、心を読み透かされている感じ、嫌いじゃない。むしろ心地良い。  まあ、爽さんだからというのもあるが。 「見回り行ってきます」 「いってらっしゃい」  結構すっきりした。見回り終わったら空たんのとこにでも行こうっと。  本当はもっとあるんだけどね。  そのあと、爽さんの言葉通り沙羅たんが風紀に入ったこととか、転校生は特待生でもないのに授業に全くでないとか。問題起こし回ってるとか。それを担任が許容しているところとか。  確か前は保健医とベッドの上で何やらもめていたとか。  説明するだけでこの小説の尺を使うから省略するね。え、メタやめろって? そんなこと言わないでよーこの小説の醍醐味でしょー?  じゃあさっさと話をすすめるよ。  体育祭は3日間。この1日目はいわゆる予選日。  種目は綱引き、バスケット、サッカー、ソフトボール、バレー、ドッヂボール、障害物競争、3人4脚、団体対抗リレー、騎馬戦の10種目。  ちなみに団体リレーと騎馬戦は最終日に予定されている。一番盛り上がるからね。  それぞれの種目の順位ごとに点数が付けられて、総合順位が決められる。  ちなみにうちの学校の場合、優勝した団体には成績upと優勝商品があるらしい。  団体は既にくじ引きで決定済みだ。全部で4団体に分かれるから、1団体の数がとんでもない人数になる。だから種目が多いのよ。  1人1種目。部活と同じ種目での参加は出来ない。ちなみに僕はドッヂボール。寛智は障害物競争。沙羅たんは言わずもがな団体リレー。 団体は、  朱雀…1-B・G、2-A・D・G、3-F  白虎…1-A、2-B・E、3-A  玄武…1-C、2-C、3-B・C・G  青龍…1-D・E・F、2-F、3-D・E  となっている。  ちなみに学校の行事は生徒会、風紀委員は強制参加。 すなわち、生徒会とマリモが同じチームという訳である。  ……嫌な予感しかしない。 ………………  はい。ここまでが回想です。 「歩たん良いところで終わらせたら視聴者さんわかりゃせんよwwww」 「メタァ」 「そんな冷たい目で見られたらあたち感じちゃ…………マジすいませんでした」  寛智の持っているカメラに手をのばそうとするが、速攻で謝られた。当初カメラを壊したことをそんなに根に持っているのね。  爽さんと翔先輩はほとんど寝ていないらしいから、途中で倒れないか心配だ。  それにこの気温。二人以外でも熱中症熱射病かかる人は必ずいるだろう。  体調管理しっかりせねば。  ということはだよ? 彼奴らを止める者はそうそういないってこと。  どうしよう……もう胃が痛くなってきた。  ……ちなみにここは待機場所。控え室と呼ぶ方が近いのかな。毎回プレハブのような建物を立てる辺り金持ちだよねぇ。  ちなみにトイレ付で部屋が4部屋ある。凄いよね。僕外から見たけど、自分ち並にでかくて憎らしかったもの。 「……空たんの勇姿でも見に行こうかしら」  遠くから見て癒されたい。また避けられたらハートブロークンだしさ。  え? 誰と見るって?  ふふふ。野暮なことを聞くなー。 一 人 に 決 ま っ て お ろ う !  この待機所に行くまでに沙羅たんとはぐれたし、ここに着いたら着いたで、「あたくち萌を探してくるわん!(はぁと」と言って寛智はカメラ片手にどこかへ行ってしまった。  ちくせう。自由人め。  ここにいるといつまたマリモに見つかるか分からんので、僕も早々に立ち去ることにしよう。  確かせい情報だと、空たんはリレーだ。  ………………あれ?  待てよ待てよ。したら今からじゃ空たんの勇姿見れんわ。  敵同士だけどせいは僕と一緒に見てくれるかな。  よし、とりあえず行こう、うん。 ………… 「せーいーー!!」  連絡を取ってみたところ、OK返事がきたので早速待ち合わせ場所に向かってみる。  だけど、無駄にこの学校広いから地図見ても時間がかかりましたよー。  やっとこさ着くと、何故か翔先輩と爽さんもいた。何故? 「誠と同じ団体だからね」  と、翔先輩は笑った。確かに、同じはちまき巻いてるわー。  ……ん?  待て待て僕何も聞いてないぞ。何故質問に答えられた?  しかも同じ団体ってまさか、二人とも2年……? 「分かりやすいな」  僕は口をパクパクさせながら二人を見ていると、爽さんはそう言ってくすくすと笑った。  それに気付き、かっ、と顔が熱くなるのを感じた。僕ってそんな分かりやすいかしら。 「っていうか、二人とも体調は大丈夫ですかっ?」と話題を変える僕。 「取りあえず大丈夫だよ。昨日うんと寝たから」ね、と爽に同意を求めて笑う翔先輩。  さすがお二人。体調管理に余念がない。 「せい」 「何?」  取りあえず僕の競技がこの中で一番早いらしく、第2体育館館まで移動することになった。その間、僕はせいに話しかける。 「もしかしてもしかすると、二人とも2年生でござるか?」 「そうだけど」  あっさり返されてもうたわ。これ、結構言いにくいことだったんやで。

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