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オレがあんなポンコツを? オレなしでは魔法を満足に発動させることができない落ちこぼれを? なわけないだろう。
ただ魔道具を外すきっかけを作ったのだから、恩義を感じろという意味で言ったまでだ。
一生徒に私情を持ち込んで、己の欲を発散させようとする非道徳なあんなやつにうつつを抜かしている場合ではないと。自分だけを見てろと。
だが、あいつがあんなことを言ったせいか、あいつと見ると何故か心拍数が上がる。
特に自分のことを見つけた途端、嬉しそうな顔をして駆け寄った時なんて、自分でも驚くぐらい跳ね上がる。
「フリグスっ!」
あいつのことを考えていたら、声が聞こえてきた。
あまりにも考えていたことでそれは夢なのかと思ったのも束の間、らしくない身体を驚かせ、顔を上げた時、席に駆け寄ってきたことでそれは現実だと思い知らされる。
「あ⋯⋯勉強中、だった? ⋯⋯邪魔してごめんね」
「いや⋯⋯」
笑顔でやってきたアラタスは、机に広げているものを見た時、しゅんとした。
そんな顔をするな。
こっちが悪いことをした気分になる。
「⋯⋯で、何の用だ」
「用ってほどじゃないんだけど、フリグスの姿を見かけたから、つい声を掛けたくなって⋯⋯。あ、別に大した用事じゃないから、また後で⋯⋯」
「今、別にいいが」
広げていたものを片付け出す。
「え、いいの?」
「ちょうどキリがいいからな」
勉強のひとやすみにはちょうどいいだろう。
「⋯⋯キリがいいなら」と呟いたアラタスが嬉しそうに口元を緩めた。
ドキ。
よく笑うなと思ったのと同時に高鳴る鼓動。
不意に見かけたやつの表情に驚いただけだ。気のせい、だと思いたい。
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