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前までは控えめな言動で、こちらが何か言うと怯えた顔を見せていたが、今は己の欲のためならばどんな手段も厭わない目の前の人間に、今日も相手をしてやらないといけないのかと頭を抱えた。 「⋯⋯お前、オレがさっき言っていたこと覚えてないのか。お前にそこまで時間を割きたくないと」 「ぼくはフリグスと一緒にいたいよ。だって、恋人、だし⋯⋯」 恋人。 お互いを大切に思い、深い愛情を共有し合う友達以上の関係。仲睦まじい関係。 恋人になる条件は、相手のことを思い、どんなことでも嬉しく、この相手以外では考えられない、嫌だと思う独占欲。 そして、好きと思う気持ちが一緒⋯⋯。 「オレらはいつ恋人なんてものになったんだ」 「なったもん! ルイ⋯⋯先生の話なんてするなって言った時、それはぼくのことが好きだからそう言ったんだなって思ったから」 「それはお前の勘違いじゃないのか。そのような主旨は言ってない」 「あれは言ったのと同じ意味だもん」 わからず屋と言いたげに語尾を強めた。 一向に譲らないし、面倒だ。 「恋人という名目で、お前はただ単に行為をしたいだけだろ」 「ち、違うもーん⋯⋯。フリグスの温もりを感じたいからだもーん」 「温もり、な⋯⋯」 怪訝そうな顔を見せる。 途端、目を逸らすが、口は尖らせたりと反抗しているようだった。 こんな様子ではいつまで経っても埒が明かない。 それこそ時間の無駄だ。 しかも、アラタスが恋人発言したことにより、周りの同級生が耳にしてしまったようでひそひそと噂話までしている。 あらぬ疑いをかけぬ前に何とかこの場を抑えないといけない。 何を言えばそこそこの頭になったとはいえ、到底及ばないくせに意固地なこいつのことを納得させることができるのか。 ふむ、と考えた数秒後、あることを思いついた。 ならばこう言ってみるか。

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