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2.
「俊我さん⋯⋯」
ぽつりと思いが溢れ、ずきずきと痛む胸を押さえる。
寂しさで埋めつくされそうになった時。
唯一の、愛賀にとっては出られない扉が開かれた。
俊我さんが来てくれたのかな、と淡い期待を向けたが、相手を見た時、いとも簡単に消え去った。
「写真集通りの美人がいるじゃん」
「やっぱ用意してきた服に似合いそうだろ?」
当たり前な顔をして入ってきたのは、垢抜けた細身の男性二人組。
恐らく今回が初めての客である二人は上機嫌な様子で話していた。
そして、ちらりと愛賀を見た時、悪巧みしているような嫌な笑みをチラつかせた。
ああ、今回も酷いことをされるんだと諦めた目で事の成り行きを見ていた。
「コレを着てこい」
半ば蚊帳の外にいた愛賀に持っていた袋を渡す。
先程の会話と見知ったブランドのロゴからして洋服であることは確かだが、一体何なのか。
押し付けられる形で渡されたそれを思わず受け取った愛賀は袋から取り出すと、両肩と胸辺り部分が開いているニットセーターとストッキングだった。
明らかに女性物である服で、仕事着として着せられているベビードールもそうだが、そういう嗜好の人達なのだろう。
そういう客はよくいた。
それは愛賀が中性的な顔立ちだからなのだろう。
「あ、今着ているそれは脱いでおけよ」
「はい⋯⋯」
今回はこれを着て行為をするのか。
風呂場の方で脱ぎ着しながら、これからされることを思うと愛賀は身を竦ませた。
逃げることなんて出来ない。
「お待たせしま──⋯⋯っ!」
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