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第1話:貧乏神は新人の仕事

「テスト?」 「ああ。ランクアップテストだ」  こじんまりしたバーのカウンターで、黒服の男はオレに言った。 「お前もこの稼業に就いて一年経ったからな。受けたいなら、ランクアップに挑戦できるが……どうする? コウ」  シニカルな雰囲気でグラスを揺らしたこの男はルーサーと言って、人間じゃない。  帽子にサングラス、スーツから靴まで黒ずくめスタイル。  いかにも死神って感じだけど、本業はキューピッドだと言っていた。  冗談なのか本気なのか、いまいちわからない。 「まあ、お前が今のランクに満足しているなら無理に受ける必要はない――」 「満足してるわけねーだろ」  オレは顔をしかめて見せた。 「神は神でも、オレ、貧乏神だぜ!?」  そう、オレは貧乏神だ。  オレの傍にいる人間には不幸や失敗が次々に襲い掛かる。  タンスの角に足の小指をぶつけたりする笑えるものから、事業に大失敗する、みたいなシャレにならないものまで幅広い。 「貧乏神なんて名前もダセーし、いるだけで周りを不幸にするってどんだけ迷惑な存在なんだよオレは。しかも神様のくせに特別なことなーんもできねえし、ショボすぎだろ!?」  オレができることと言えば、気合を入れたら今みたいに実体化出来るってことくらいだ。  空を飛ぶことすらできないから、ほぼ一般人と一緒。 「貧乏神は新人の仕事だからな。ちなみに、テストに合格すると次のランクは福の神だ」 「え、マジで!? 今と正反対じゃん! 受ける受ける!」  オレは即答したあとで眉をひそめた。 「……てか、どんなテスト? オレ、勉強死ぬほど苦手なんだけど、体力も特にないし」  ルーサーは小さく笑うと、店のドアを指さした。 「次にあのドアから入ってくる人間をお前の力で心から幸せにしろ。それが今回のテスト内容だ」

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