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第6話:不幸スパイラル
「もうユキオ帰ってきてっかな~……」
オレはアパートに戻りながら、ルーサーの言葉を考えていた。
家に押しかけてそろそろ二週間が経つ。
最初の頃はオレの顔を見るたびに「まだいたのか」と言っていたユキオだったが、一週間を過ぎたあたりから厨房の残り物を持って帰ってくるようになった。「自分が食べるため」とは言うが、どうみてもたっぷり二人分はある量だ。
なんだかんだで面倒見がいい……というか、かなりお人好しな性格であることは間違いない。
温め直されて出される料理はうまかったし、オレが「ウマいウマい」と食べるとユキオは耳を赤くしてそっぽを向いた。いかつい大男がそんな仕草をすると、大型犬が少しずつ懐いてくるみたいで何だか可愛い。
まあ、あっちからしてみると迷い込んできた猫でも飼ってるような気分なんだろうけど。
「ユキオのことを知る、ねえ」
呟いたオレは、ふと初日のことを思い出した。
『ハヤト』と呼んでオレを抱きしめたユキオ。
ただの友達、にしてはあの時のユキオは酷く切羽詰まっていた。
「ハヤトって誰なんだ? それらしい奴と連絡とってる様子はなかったけどな……」
『ハヤト』について考えながらドアを開けたオレは首を傾げた。
玄関に靴はあるのに、部屋の中は真っ暗だったからだ。
「ユキオ? いるのか……うわっ!?」
きょろきょろしながら部屋に入ったオレは、ベッドに座り込んでうなだれているユキオに気付いて飛び上がりそうになった。
死人のオレをびっくりさせるなんて恐ろしい奴だ。
「どーしたの、灯りもつけずに。もう寝るとこ? じゃねーよな、スーツだもんな」
ユキオはのろのろと顔を上げてオレを見た。
眼が死んだ魚みたいになっている。
「……お前、まだいたのか」
「いるよ。なんかあったの?」
オレが顔を覗き込むと、ユキオは視線をそらした。
「……た」
「え?」
「……クビになったんだ、今日」
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