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第11話:可哀想だ
「ハヤトとは幼馴染で、ずっと同じ学校で……俺達はずっと一緒にいた」
ぽつりぽつりと話すユキオの身体は小さく震えている。
「専門卒業して、就職前に旅行に行こうって話になったんだ。レンタカー借りて温泉でも行こうぜって。――でも、当日に俺が寝坊しちまって」
言葉を切ったユキオの喉がヒュッと音を立てた。顔色は紙のように白い。
「……駅前のロータリーで待ち合わせてた。俺がハヤトを見付けて、あいつが振り返った瞬間、バスが突っ込んできて……」
その時の光景がよぎったのか、ユキオはぎゅっと眼をつぶった。
「運転手が心臓発作を起こしたとかで……何人も巻き込まれた。……俺があの時寝坊しなかったら、ハヤトはあそこに立ってなかったのに」
ユキオはずるずると滑るようにその場にうずくまると、静かに泣きだした。
大きな体を丸めてすすり泣くユキオを見ていると、喉の奥から胸にかけて何か大きな塊でも詰まってるみたいな、ぎゅっと締め付けられる気持ちになる。
「……可哀想だ」
思った時には口から言葉が出ていた。
「アンタ、可哀想だな。……オレが何かしてやれたらいいのに」
ユキオはうつむいたまま、しゃくりあげるように笑った。
「お前……もっと言葉選べよ」
「え? でもホントにそう思うから」
ユキオは大きくため息をついて、ポツンと呟いた。
「俺……ハヤトに告白するつもりだった」
「え? ハヤトってゲイだったの?」
「違う。フツーに彼女もいた。……でも、ずっと好きだったから」
ユキオは顔を上げると、封筒を眺めた。
「旅行で告白して、けじめをつけようと思ってたんだ」
オレは瞬いた。
「ならさ。旅行、やり直そうぜ」
「……え?」
「オレがハヤトの代わりになるから」
ユキオはぽかんとオレを見つめた。
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