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第16話:テスト終了

「驚いたな」  唐突に声がして、オレは慌てて振り向いた。雨の中、黒ずくめの男が立っている。 「ルーサー!」 「正直、まさかお前がテストに合格するとは思わなかった」 「合格?」  ルーサーはオレを指さした。 「ランクアップおめでとう、コウ。今からお前は福の神だ」  オレはぎょっとして自分自身を見た。  光っているのはオレだった。  雨がきらきらと乱反射して、まるで光のヴェールを纏っているようだ。 「まあ、今までと仕事は変わらない。お前がいるだけで周りの人間に幸運が訪れる。お前は今まで通り気まぐれにふらふらと……」 「ルーサーっ! そんなことより、ユキオが!」  ルーサーは帽子のつばを押し上げると、雨に打たれて横たわるユキオを見た。 「助けを呼んでくれ! アンタ今みたいに出たり消えたりできるんだろっ!」 「呼んでもいいが、あんまり意味がないぞ」 「何で!」 「そいつはもう、ほぼ死んでる」  オレは大きく口を開けた。 「駄目だ」  こぼれた言葉は、自分の口から出たとは思えないほど弱々しかった。 「ユキオが死ぬなんて駄目だ……なあ! オレは福の神になったんだろっ!? 何とかできないのかよっ!」 「出来なくはないが」  ルーサーは肩をすくめた。 「ここまで死にかけた人間を蘇生させるには幸運ごときじゃ手に負えない。奇跡が必要だ――お前の持つ神の力を、ここで全部吐き出すくらいのな」 「分かった! どうしたらいい!?」  即答したオレにルーサーは眉をあげた。 「分かってるのか? 神の力をすべて使えば、お前は福の神どころか貧乏神にすら戻れない」 「だから分かったって言ってんだろ!」  オレは地団太を踏んだ。 「オレは迷ったり後悔したりしたことは一度もねーんだよ! ユキオが助かるなら神の力でも何でもくれてやる!!」  ルーサーはサングラスを外した。オレをじっと見つめる。 「お前でも、そんな風に怒鳴るんだな。――安心したよ」 「はあ!?」  ルーサーは手を伸ばした。その手にはいつのまにか、黒光りする銃が握られている。 「最後にその男に残す言葉はあるか?」  オレはユキオを振り返った。目を閉じたユキオの顔色は紙のように白い。 「――絶対モテるから、今度二丁目で遊んで来いって言っといてくれ」  ルーサーは喉の奥で笑うと、オレに向かって銃をぶっ放した。  カッ――と光が大きく弾け……遠くでサイレンの音がした。

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