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第2話 風が揺らすページと横顔

次の日の朝。 悠馬は、いつもより少しだけ早く教室に入った。 窓の外は、昨日よりも少しだけ青くて、 教室の中にはまだ誰の声もなかった。 だけど── 「……おはよう」 もう席についていたのは、久遠 蓮だった。 悠馬は驚いた。まるで、自分と同じことを考えていたかのように、 隣にいる彼の姿が、自然すぎて心が静かにざわついた。 ⸻ 机の上にひとつ、ノートが置かれている。 蓮は何かを描いていたようだった。 「……絵、描いてるんだ?」 悠馬の言葉に、蓮は少しだけ視線を向けて、小さく頷いた。 「……風景、とか……静かなものしか描けないけど」 風が窓から吹いて、蓮の髪がふわりと揺れる。 その横顔を見て、悠馬は思った。 ──綺麗だ、って。 ⸻ 「静かなもの、俺も好きだよ。 たとえば……こういう朝とかさ。蓮くんと話してる今とか」 蓮が、一瞬だけ目を見開いた。 そして……ほんのすこし、口元をゆるめた。 「……変な人。けど、悪くない」 ⸻ 教室がざわめきを取り戻す頃には、 ふたりの心の中に、昨日とは違う空気が流れていた。

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