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第3話 同じページをめくる音

昼休み。 教室には、あちこちから笑い声が響いていた。 けれど悠馬と蓮の席の周囲だけは、まるで時がゆっくり流れているようだった。 ⸻ 「……読んでるの、それ?」 悠馬が声をかけると、蓮はゆっくりと顔を上げた。 手元には文庫本。表紙の端がほんの少し、めくれている。 「うん。静かな話、だけど綺麗で……落ち着くんだ」 「見せて」 悠馬が手を伸ばすと、 蓮は少しだけ躊躇してから、本を差し出した。 ⸻ ページをめくる。 そこには、雪の中で誰かが誰かの手をとる、 そんな静かなシーンがあった。 「……なんか、君みたいだね」 不意に漏れた悠馬の言葉に、蓮は少しだけ目を見開いた。 「ぼくが……雪の中の人?」 「うん。静かで、でもあったかそうな人。……なんとなく、そう思った」 ⸻ 蓮は少しだけ視線を逸らして、窓の外を見た。 「……じゃあ、悠馬くんは」 「え?」 「その手を取ってくれる人、かな」 ⸻ 不意に鳴ったチャイムの音が、 その空気を切り裂いた。 でも、悠馬の胸には、 蓮の言葉と、横顔が、しっかりと残っていた。

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