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第4話 風の強い放課後
放課後。
いつもの帰り道、今日は少し風が強かった。
悠馬は、教室を出る前に蓮の姿を探したけれど、
もういなかった。
「……早いな。今日は、先に帰っちゃったのかな」
なんとなく、胸に小さな寂しさが残ったまま、
悠馬は校門を出ようとしたそのとき──
ふと、渡り廊下の影に立つ蓮の姿が見えた。
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「……蓮くん?」
声をかけると、蓮は一瞬だけ驚いたように目を見開いて、
すぐに、いつもの静かな顔に戻った。
「……風が強いから、ここで止まってただけ」
「そっか……じゃあ、帰ろっか」
悠馬が歩き出すと、蓮は一歩だけ後ろをついてくる。
でも、足音がすごく静かで──
まるで、消えてしまいそうな距離だった。
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「……ねぇ、蓮くん」
「なに?」
「……なんか、今日……冷たい?」
ふと漏れた言葉に、蓮は足を止めた。
風が、ふたりの間をすり抜ける。
「……ちがう。悠馬くんが、優しすぎるから。
……うれしいのに、うまく笑えないんだ」
⸻
悠馬は振り返って、そっと蓮の手首を握った。
「じゃあさ。笑えるまで、ぼく、そばにいる。
……だめ?」
蓮は少しだけ目を伏せて、それから小さく笑った。
「……ほんと、変な人。
でも……それが、好きかも」
⸻
風はまだ強かったけれど、
ふたりの距離は、もう風には負けていなかった。
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