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第5話 君の体温を知った日
翌朝。
悠馬が教室に入ると、蓮はいつもより少しだけうつむいていた。
手元には教科書。でも、ページは全然進んでいないようだった。
「おはよう、蓮くん。……元気ない?」
声をかけると、蓮はゆっくり顔を上げて、いつもの調子で答えた。
「……ちょっとだけ、熱っぽくて」
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「保健室行った?」
「ううん。……平気。大げさにしたくないから」
そう言って笑おうとする蓮の顔は、ほんのり赤い。
その笑顔がかえって心配で、悠馬は思わず手を伸ばした。
「おでこ、いい?」
蓮は一瞬ためらったけど、何も言わずにうなずいた。
悠馬の手が、そっと蓮の額にふれる。
体温が指先に伝わって、ドキッとする。
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「……うん、ちょっと熱ある。帰ったほうがいいんじゃない?」
「……やだ」
「え?」
「だって、悠馬くんに……会えなくなるし。
それに……もうちょっとだけ、このままがいい」
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悠馬の手は、蓮の額に触れたまま動けなくなった。
胸の奥が、あたたかいのに苦しい。
この気持ちは──なんだろう。
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「……放課後、一緒に帰ろ。途中まででもいいから」
蓮の声はかすれていたけれど、
そこにあった想いは、ちゃんと悠馬に届いていた。
「……うん、もちろん」
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教室のざわめきの中、
ふたりだけが、少しだけちがう時間を生きていた。
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