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第10話 好きって、言いたくなる

土曜日の午後。 学校は休みだけれど、ふたりは待ち合わせをしていた。 制服じゃない私服の蓮は、 少しだけ雰囲気が違って見えた。 「……なんか新鮮。 制服もいいけど、その服も……似合ってる」 悠馬の言葉に、蓮はほんのり頬を染めて、 いつものように静かに笑った。 ⸻ 「悠馬くんは……変わらないね。 でも、そこが安心するって思う」 ⸻ 人の少ない公園のベンチに座って、 ふたりは缶のココアを持って並んでいた。 静かすぎて、 言葉にしなくても伝わる気がして── だけど、今日はどうしても言いたかった。 ⸻ 「ねぇ、蓮」 「ん?」 「……ぼく、君のこと、好きだと思う」 ⸻ 蓮の手が、ココアの缶をきゅっと握る。 「……ほんと?」 「うん。まだ、はっきりした形じゃないかもしれないけど、 会いたいし、触れたいし、笑ってほしいって思うから── これが“好き”じゃなかったら、他に言葉が見つからない」 ⸻ 少しの沈黙。 でもそれは、優しくて、やわらかい時間。 「……ぼくも、好きだよ」 ⸻ その瞬間、ふたりの間に何かがふわっとほどけた。 距離じゃない。 心のなかの、ひとつの扉が──ゆっくり開いた。 ⸻ 手をつないで、 小さな声で笑い合って、 名前を呼び合うその空気すべてが、 “好き”という言葉で、やさしく包まれていた。

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