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第12話 キスのあと、ぼくの名前を呼んで
キスのあと──
ふたりのあいだに流れる時間は、やわらかくて、静かで、
でも、どこか照れくさいような空気が満ちていた。
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「……ごめん、急にキスなんて」
そう言った悠馬の声は、いつもより少しだけかすれていた。
でも蓮は、首を横に振る。
「ううん。すごくうれしかった」
「だって……“好き”って言葉が、
ほんとうのキスになったみたいだったから」
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その言葉に、悠馬の胸がまた強く熱くなる。
「蓮……」
呼んだ名前に、蓮はまた頷いた。
「もう一回、呼んで……?
キスのあとの声で、悠馬くんに名前、呼ばれたい」
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「……蓮」
「……ん」
「蓮、好きだよ」
「悠馬……ぼくも、好き」
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ふたりの距離は、もう迷いがなかった。
唇が近づく。
今度は、そっと。
でも、さっきより長く、確かに触れ合った。
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「蓮……」
「……ふふ、呼ばれるたびに、どきどきする」
「もっと、いっぱい呼ぶよ。
何回でも。蓮がぼくの隣にいるかぎり──
何度でも、“好き”って言いたいから」
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風が止んだ公園の片隅で、
ふたりの恋は、“夜のはじまり”に包まれていった。
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