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第3話

「あの、無理ならなにも言わないで居なくなってくれて良いんだけど……、その…付き合ってください…っ」 付き合ってください、と告白したのは俺から。 なにごとにも真面目に取り組む姿に惹かれた。 笑った時に眉間の間がクシャってするのが可愛かった。 あの日のことは、よく覚えている。 「え……、と…、ドッキリ…? ウーチューバーやってる、とか…。 あ、罰ゲーム? 俺は、どう反応した方が良い…かな、」 好きだと伝えたら、そう言われ、肩を落とした。 そりゃそうだ。 同性なんだから。 だけど、その後、…本当に?と聞いてきた。 真摯に向き合おうとする姿がやっぱり好きで、うんと頷く。 「そっ、か…」 それから暫くの沈黙。 真面目な彼らしく真剣に考えてくれているのだと分かった。 だから黙ってその姿を頭に焼き付ける。 やっぱり、好きだな… これで普通に会えんの最後かもだし…… 言わなきゃ良かったかもな…なんて、吐いた言葉はもう2度と口には戻ってこねぇよな これが口をきいてもらえる最後かも知れない。 言わなきゃ良かったなんて後悔はしたくないが、万に一、億に一でも、兆に一でも…と思ってしまったんだ。 好きだから、両想いになりたい。 それは贅沢か。 同性同士だって、それくらい願っても良いだろ。 なんで、同性同性は爪弾きにされてしまうんだ。 人間らしく生きていたって良いだろ。 「あの、さ」 うん。 そうだよな。 重々しく開かれた口に、覚悟を決めた。 「お試しから、でも、良い…? もう友達なんだけど、もう少し知ってから判断したい…んだけど、さ」 けれど、それは杞憂に終わる。 「え…? 良い、の」 「え? うん。 あんまよく知らないのに、良いとか悪いとか判断出来ねぇだろ。 友達としてはもう好きなんだから、恋愛感情に発展するかもだし。 それから返事をしても、良いかな…?」 「は、はは…。 真面目…。 でも、ありがとう」 こうして、まずはお試しから…と交際がはじまった。 そうしてみれば後は簡単で、沢山話して沢山遊んで、時々喧嘩をして。 いつの間にか本格的に付き合っていた。 手を繋ぎたいと伸ばしたら握り返してくれたのは夏のこと。 キスをしたのは秋の終わり。

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