8 / 15

8.※発情期

自分しかいない白い空間は、暑さも寒さも感じなかった。 それなのに今日はやけにあつく感じる。 静かに扉が開かれる。 「姫宮さん、身体の調子はいかがですか?」 「⋯⋯」 「今日も食事をしてなかったそうですね。少しでも食べないと元気に──」 「⋯⋯──して」 口を僅かに動かした。 「えっ」と聞き返した時、ゆっくりと首を動かした。 「先生⋯⋯愛賀と子作りして」 「え、あ⋯⋯何を言って⋯⋯」 混乱している先生の首に手を回しては、強引に引き寄せ、薄く開いた唇に触れた。 啄み、それから掬うように 軽くキスをした。 しかしそれだけでは留まらず、主治医の顎を指先で添えながらも、その唇を舌でなぞるように舐める。 ちょっと、や、あっ、と何かを言いかけているようだったが、うっすらと頬を染める表情を見て、愛賀は頬を緩めた。 悦んでいる。 が、ぐいっと肩を掴まれ、引き離されてしまった。 「急に⋯⋯こんなことをしちゃダメじゃないか! 君は、一体何を考えているんだ」 「ダメなの⋯⋯? 愛賀は赤ちゃんが欲しいのに⋯⋯」 「欲しいからって、誰でもこういうことをするのかい? 今の発情期らしい君に⋯⋯ダメだろうっ」 「そう言って、愛賀のフェロモンに充てられて、こんなにも大きくしているのに⋯⋯?」 ズボン越しからでも分かる足の間のを悪戯に指で触った。 「⋯⋯っ、そこは、触らないでくれるかな」 「愛賀が優しく慰めてあげるよ?」 「⋯⋯っ、だから⋯⋯っ」 「ねぇ、いいでしょ⋯⋯⋯?」 潤んだ瞳で上目遣いで見つめる。 何かに耐えているように眉間に皺を寄せ、唇を噛んでいたが、そのうち根負けした主治医は短く域を吐いた。 「⋯⋯っ、それで君の気が済むなら⋯⋯」 「ふふ、ありがと、先生」

ともだちにシェアしよう!