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第8話

次の日も、その次の日も、百瀬は姫野に声をかけて、絡むようになり、昼食は五人で食べるのが定番になった。 最初は桜庭に対して顔を真っ赤にしていた姫野も、数日かけて、たどたどしくはあるものの、普通に会話できるようになっている。 「姫ちゃん肉団子ちょーだい〜」 「は?自分の弁当食べなよ。あげないから」 姫野と百瀬による攻防も、相変わらず続いている。 俺はというと、 「早く別れればいいのに」 「あっちが飽きるまで続くだろ」 「飽きるって、」 「姫野、小山、ちゃんと練習しろ〜」 先生に注意されて、止まっていた足を進める。いちに、いちに。 桜庭との交際は依然として続いていた。 どうせ、すぐ飽きる。そう思っていたのに、毎日桜庭は嬉しそうに俺に触る。 「僕、告白するから」 「え?」 「桜庭くんに、告白」 いちに、と踏み出した足を止める。 「別にいいでしょ?お試しで付き合ってるなら僕にもチャンスあるかもだし」 「別に、そんなこと……」 俺に訊かなくても、と続けようとした声がやけにうわずって、言葉を止めた。 桜庭は、姫野に告白されたら、なんて答えるのだろう。もしかしたら。上手くいって、俺との恋人関係も解消かもしれない。そしたら、また平穏な日々が戻ってくる。 なのに。 どうして今、少し泣きそうになっているのだろうか。 「はーーーー」 姫野が大きくため息をつく。 「止めないんならそんな顔するなよな。」 俺は今、どんな顔をしていただろうか。 「明日の体育祭で、言うつもり」 体育祭は、桜庭は騎馬戦とリレーとペアダンスにでると言っていたっけ。 姫野に告白されたら、桜庭は。 関係ない、関係ないはずなのに、この胸のつかえは、なんだろう。

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