10 / 17

第10話

リレーをもって、午前の競技を全て終え、昼休憩にはいる。 いつものクセで、食堂に来てしまうと、百瀬と剣道が座っていた。 「あれ、小山ひとり?湊も一緒かと思ったんだけど」 百瀬が小首を傾げる。 「姫ちゃんも来ないんだよな〜」 頬杖をついている百瀬はどこかつまらなそうだ。 「小山、見てきてよ」 え、と声が漏れる。 「人に頼むな、自分でいけ」 剣道にじとっとした目で見られて、「だってさあ……」と百瀬が毛先をいじる。 「あ……、俺、行ってくるよ」 なんだか、百瀬の空気がいつもと違う気がして、とっさにそう口にだしていた。 踵返して、グラウンドにもどる。弁当を食べている生徒はチラホラいるが、桜庭と姫野の姿はない。 なら、トイレかと、校舎にはいって、階段をのぼりかけたところで、「――好きです……!」という姫野の声が聞こえた。 は、と息をつめる。 そうだ。なにを失念していたのだろう。姫野は、今日、桜庭に告白するつもりで。 「小山くんと、付き合ってるってきいて、僕じゃ、だめですか……?」 桜庭と俺はお試しのお付き合いだということを、姫野は知らない。 ドクン、と心臓が嫌な音をたてる。 桜庭の、答えは。 聞きたく、ない。 気づいたら、元きた道を走って戻っていた。 姫野は可愛い。男の俺からしても、可愛いと思うのだ。桜庭とも、お似合いだ。 俺なんかより、ずっと。 胸がズキズキする。 食堂に戻ると、百瀬と剣道のふたりはすでに昼食をとり始めていた。 「いた? ふたり」 百瀬が俺に気づいて顔をあげる。 「い、いなかった」 とっさに嘘をついてしまって、百瀬から視線を逸らす。 「ふーん……」 百瀬は退屈そうに頬杖をついた。 ふたりは、付き合うのだろうか。そしたら、俺は晴れてお役御免だ。 弁当は喉を通らなくて、半分残した。桜庭のラスクを食べない日は、久しぶりだった。

ともだちにシェアしよう!