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第10話
リレーをもって、午前の競技を全て終え、昼休憩にはいる。
いつものクセで、食堂に来てしまうと、百瀬と剣道が座っていた。
「あれ、小山ひとり?湊も一緒かと思ったんだけど」
百瀬が小首を傾げる。
「姫ちゃんも来ないんだよな〜」
頬杖をついている百瀬はどこかつまらなそうだ。
「小山、見てきてよ」
え、と声が漏れる。
「人に頼むな、自分でいけ」
剣道にじとっとした目で見られて、「だってさあ……」と百瀬が毛先をいじる。
「あ……、俺、行ってくるよ」
なんだか、百瀬の空気がいつもと違う気がして、とっさにそう口にだしていた。
踵返して、グラウンドにもどる。弁当を食べている生徒はチラホラいるが、桜庭と姫野の姿はない。
なら、トイレかと、校舎にはいって、階段をのぼりかけたところで、「――好きです……!」という姫野の声が聞こえた。
は、と息をつめる。
そうだ。なにを失念していたのだろう。姫野は、今日、桜庭に告白するつもりで。
「小山くんと、付き合ってるってきいて、僕じゃ、だめですか……?」
桜庭と俺はお試しのお付き合いだということを、姫野は知らない。
ドクン、と心臓が嫌な音をたてる。
桜庭の、答えは。
聞きたく、ない。
気づいたら、元きた道を走って戻っていた。
姫野は可愛い。男の俺からしても、可愛いと思うのだ。桜庭とも、お似合いだ。
俺なんかより、ずっと。
胸がズキズキする。
食堂に戻ると、百瀬と剣道のふたりはすでに昼食をとり始めていた。
「いた? ふたり」
百瀬が俺に気づいて顔をあげる。
「い、いなかった」
とっさに嘘をついてしまって、百瀬から視線を逸らす。
「ふーん……」
百瀬は退屈そうに頬杖をついた。
ふたりは、付き合うのだろうか。そしたら、俺は晴れてお役御免だ。
弁当は喉を通らなくて、半分残した。桜庭のラスクを食べない日は、久しぶりだった。
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