14 / 17

第14話

「またおいで〜」 そう、桜庭のお母さんに声をかけられて、桜庭の家を後にする。 勉強会のおかげで、追試はクリアできそうなレベルまで底上げできた。あとは、自分で復習するだけで良さそうだ。 百瀬は飲み込みは悪くなかったが、なんせ、量が多く、姫野と追試までの一週間、居残りして勉強するらしい。 追試が終わったら、夏休みにはいる。 去年は友達なんていなかったから、夏期講習以外はずっと家にいた。けど、今年は。 帰り際に、桜庭が「小山くん、夏休みになったら夏祭りいこうね」と微笑んできたのを思い出す。百瀬からも、プールに誘われていて、剣道は部活の試合があるらしい。 いつの間にか、桜庭を中心とした輪の中に溶け込んでいる自分に驚く。 ……大丈夫、大丈夫。前とは、違うから。 帰り道を歩いていると、桜庭の匂いがまだ自分からする気がして、赤くなった顔を隠すように下を向いた。

ともだちにシェアしよう!