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第6話 仕置きは甘く優しく

 孝弘は、強引に部屋に引き込まれ、これから始まる淫猥な時間に期待し、うっそりと笑う炫をベッドに押し倒した。  そして、腰に巻いたジャケットの結び目を解き、ほとんど引っ掛けただけのスラックスと濡れたボクサーパンツを両足から抜き取る。    顕になった炫の昂りは期待に震えて蜜を流し続けていた。  昂りも、脱毛されてツルツルになっている袋も、その奥にある縦割れの後孔も、全部がびしょ濡れになっている。 「あは。瞳孔開いてる」  ペロリと真っ赤な舌で唇を舐めた炫が、孝弘の目元を撫でる。  炫もお預けを食らって我慢できないのだろう。  両足を孝弘の腰に絡めて体を引き寄せ、孝弘の首に腕を巻きつけてキスをねだった。 「煽った責任、取ってくれるんだよな?」 「いつも取ってるでしょ」  生意気な口を唇で塞ぐ。  炫から漏れた吐息は、愉悦に満ちていた。 「ん、ふ……」  いつもはこのまま貪るような口付けを交わし、性急に体を繋げる。  そうして朝まで繋がっているのだが、今日、孝弘にはそのつもりがない。  孝弘の貴重な喫煙時間を中断させた。  同僚と思われる誰かに露出狂のド変態だと公言しようとし、さらにはやっとのこと理性を保って運転する車の中で行為に及ぼうとした。 (しっかり償ってもらうぜ)  孝弘は炫の舌を甘噛みすると、炫の大好きな上顎を避けながら自身の舌で口内を撫で回す。  上半身を覆う邪魔なシャツは、下からひとつ、またひとつとゆっくりボタンを外し、キスマークだらけの肌を晒した。  普段とは違う攻め方に胡乱な目を向けてくる炫だが、孝弘の意図を汲んで背中を浮かせる。  軽くなった体の下からシャツを抜き、腕から引き抜こうとして、孝弘は考えを改めた。 「え、何、今日そういうプレイ?」 「好きだろ?」 「好きだよ。でも、今日は俺もタカヒロにいっぱい触りたいんだけどぉ」  もぞりと抵抗するように動いた炫の腕を素早くシャツで縛る。  前腕を重ねるようにして縛ったため、そう易々と解けることはない。  炫の腕をその頭上のベッドに押し付けると、唇を尖らせた顔が不満を訴えていた。 「俺の邪魔をしたお仕置きだ」 「はあ? タカヒロも楽しんでたじゃん! 理不尽!」 「理不尽上等」  ふん、と鼻で笑いながら、孝弘も全ての服を脱ぐ。  炫より背は低いが、孝弘の方が筋肉質でがっちりしている。  男性の象徴も太く長く、固さも持久力もあるため、ビッチな炫を気絶させるまで満足させられる。  男らしい体をしているのは間違いなく孝弘の方だ。  それを惜しげもなく晒すと、炫は情欲に揺れる瞳で、物欲しそうに孝弘の全身を視姦してきた。 「見過ぎ」 「だって……」  孝弘の反り返った剛直を凝視しながらごくりと喉を鳴らす炫に、孝弘は優しく口付けた。  炫が嫌がることを知っていながら。 「ん、あ……ねぇ、早くぅ……」 「全部やってやるから、待ってろ」  むずがる炫に構わず、孝弘はことさらにゆっくりと瑞々しい肌を啄み、舐めていく。    炫は、パキッとした明確な快感が好きだ。  性急に、激しく、貪られるようにして攻め立てられるのがイイらしい。    だが、快感に素直な炫は、じわりと広がる快感を嫌がる。  焦らすのは好きなくせに、焦らされるのは耐えられないのだ。    挿入を優先したセックスばかりしていた炫は、じっくり攻められること慣れていないらしく、激しく脳を焼き切るような刺激より、暖炉の火のような穏やかで長く続く快楽に弱い。  デリカシーがなく、生意気で破廉恥な炫の唯一の弱点と言えた。    孝弘は余裕で腰を振り煽ってくる炫も、激しく攻め立てられて「もっと」とねだってくる炫も好きだ。  けれど、じわりと絶え間なく続く快楽に悶える炫が一番可愛いと思っている。  今日は孝弘の思うように炫を抱く。  それは、喫煙時間を邪魔されたときには決めていたことだった。  噛まれるのが好きな首筋を舐め、そのまま鎖骨をたどり、触りもしないのにぷっくりと膨らんだ胸の粒を素通りし、適度に筋肉が付いた張りのある胸の肉を啄む。  手は滑らかな内腿を泳ぎ、絶え間なく蜜を流し続ける昂りも、キュッと吊り上がった袋も、縦割れの後孔も、すげなく素通りして行く。 「ふ、ぅ……ぁ……」    孝弘が炫のイイところに触れず遠ざかって行くたびに、悩ましげに眉を寄せ、ひくりと喉を震わせる。  物欲しそうに孝弘の唇や手を目で追いかける炫はとても可哀想で、そしてとてつもなく可愛い。    無意識に緩んだ孝弘の口元。  弧を描いた唇を重ね、炫の口内をゆっくりと嬲っていく。  炫は刺激を求めて激しいキスを誘うが、孝弘はそれをするりと躱した。   「もうッ……触ってよぉ……!」  焦らされてじっとりと汗をかいた炫が涙を浮かべ、体を震わせながら懇願する。  ひっひっ……としゃくりを上げているのに、それでも炫の昂りは萎えていない。    とんでもないマゾだ。  炫だけじゃない。  暴発しそう剛直を勃たせている孝弘も、だ。 「どうしよっかな」  触れるか触れないかのタッチで炫の昂りを指でなぞる。  まだ我慢できそうな気もするが、カクカクと震える脚が哀れだった。 「タカヒロぉ……!」  叫ぶように呼ばれた名前。  たっぷりと甘さを含んだ声に、孝弘は縦割れの後孔に剛直をゆっくりと沈めていく。 「はぁんッあ、ぁ、あああ!」  煙草が火に焼かれて灰になるように、じわじわとミリ単位で腰を推し進めていけば、炫は腰をくねらせて悶える。  後孔も孝弘の剛直に縋り付くように蠕動し、奥へ奥へといやらしく誘った。

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