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第11話
すっかり空は藍色になっていた。
スマホのロック画面には23時を過ぎた時刻が表示されている。
飯も食べずに染色に夢中になっていた。
自営で、且、自宅が近いとこういう働き方になってしまう。
けれど、良い色に染めることが出来たので今日はよく眠れそうだ。
「あ、お兄。
おかえり。
今日のご飯はカレーだよ」
「あー…。
俺、いいや」
「藍華が作ったんだよっ」
「舌拡張したばっかだから、今は食えねぇ。
冷凍しといて。
いつか食う」
「もーっ、そういうのは作る前に言ってよっ」
「昨日言ったろ」
流動食、という意味合いで言えばカレーは良いのだが、スパイスが滲みる。
ピアスを空けたての頃はアイスばかり食べていたが、今回はあくまでも拡張なので2、3日で違和感はなくなるだろう。
それまでは、ゼリー飲料とアイスで生活をするつもりだ。
「スプタンにしたら、なんだっけ。
横向きの舌ピするの?」
「お前、なんでそんなマニアックなやつ知ってんだよ」
「秘密」
自営業であるからこそ、この見た目が許されているのは重々承知だ。
だから、過激な改造はしないつもりだが、隠れる場所なら良いだろうという驕りだ。
刺青もピアスも、家業を継いだからこそ出来たこと。
それに関しては、有難い環境だと自負している。
だからこそ、そんな知識をどこから得たのか気になる。
「あ、彼氏か?
そんなマニアックなピアスしてる奴は変態だぞ」
「そんなんじゃないよ。
てか、お兄に言われたくなーいっ」
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