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第2話
家に着くと光希はズカズカとなかに入る。
「おっじゃま~。良い部屋住んでんねー、台所使っちゃいますよーっと。」
「よしっ」と腕まくりをすると光希は早速料理に取りかかった。
トントンと聞き心地の良いリズムで野菜を切る音がする。
圭吾がボーッと見つめていると光希がヘラヘラ笑いながら話しかけてくる。
「そんな見つめられてたらやりづらいって~。今のうちにシャワー、浴びちゃいな。」
「あ、あぁそうする。」
圭吾はどこかギクシャクしながらも脱衣所へ向かった。
黒淵眼鏡を外し、シャワーを浴びる。
高校の頃からどことなく「人生どうにでもなる」な光希だったがここまでとは思わなかった。
圭吾はひとつため息をついてシャワーを済ませて出ると、キッチンの方からいい匂いが漂ってくる。
さっさと身体を拭い、部屋着に着替えてキッチンの方へ出てみると何とも美味しそうな青椒肉絲が出来上がっていた。
「じゃーん。うまそうでしょ?あぁ、ご飯は間に合わなかったからレンチンご飯で許してな?」
香りだけでよだれが溢れ出てくる。
ダイニングテーブルの席について無我夢中で食べる。
どれだけの間人の作った飯を食べていなかっただろう?
人が作った飯はこんなにも暖かいものだったか?
そんなことを思いながら食べていると水の入ったコップを置いて光希がニコニコしながら向かい側に座った。
「そんな旨そうに食ってくれんのうれしー。俺、胃袋掴んじゃったかな?」
掴んだどころじゃない、鷲掴みだ。
食べ終わり、水を飲み干したところで圭吾は今までの事を話した。
希望の会社に入れたものの、いつも忙しく更にプロジェクトのリーダーを任されるとは思わず、任された仕事をこなしていたらいつの間にか飯も疎かになっていた。
光希はうんうんと聞いている。
その様子は高校の頃とは変わっておらず安心する圭吾。
「お前はどうなんだ、原田。ヒモをしていたと言ってたが。」
「ん?あぁ言葉通り。高校の頃付き合ってた彼女のとこで居候して、そこから捨てられては拾われての繰り返し。拾われたらその人の好みに寄せて、家事をして居候させてもらってたって感じ。これからどうしようかなー。」
うーんと悩む光希に対し圭吾は言った。
「うちに住むといい。お前の飯、食いたい。」
「あれー?居候されるの嫌だったんじゃないの?」
「別に嫌とは言ってなかっただろう!」
顔を覗き込む光希の顔を押し返しながら言った。
「で、お前は俺の家でいいのか?」
「もっちろーん。これからよろしく、東ぁ。」
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