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第3話

「早速だけど、どんな風になって欲しい?」 「なにがだ?」 「服装とか!こういう風に着飾って欲しいとかこの色に髪染めて欲しいとかネイルして欲しいとか~…、とにかく!どんな風になって欲しい?」 「別に、何にならなくても良い。お前の好きなような格好で居てくれ。」 圭吾がそう言うと光希はポカンとする。 まさかそんなことを言われると思わず頭をかく。 今まではヒモ先の言う通りにしていたからどうしたら良いか分からない。 自分の好きなように着飾れと言われても、自分の好みが分からない。 昔からそうだった。 子供の頃から親からの関心を受けず、自ずと自分自身についても興味を持たなくなってしまったのだ。 ぼぅっとしている内に圭吾から衣服を渡される。 「俺のスウェットだ、下着は新品のをやる。寝るときそんな格好だったら休めるもんも休めんだろ。」 「え、これ良いの?」 「俺の使ってるやつで申し訳ないがな。とりあえずお前もシャワー浴びてこい。バスタオルも置いてるやつ使って良いから。」 「布団用意してくる」と言って圭吾は別室に行くと、光希はスウェットをギュッと抱き締めた。 高校時代の学友だから軽蔑されるのかと思っていた。 しかし圭吾は軽蔑せず自分を受け入れてくれることにどこか嬉しさを感じる。 シャワーから出てくると圭吾がちょいちょいと手招きをする。 近づくとひとつの部屋に布団が敷かれている。 「ここは特に使い道がない部屋だ、好きに使って良い。今度ベッドでも買いにいこう。」 「え、そこまでしなくても…。」 「どうせお前が出ていっても来客用で使うだろ。だから気にすんな。」 「…ありがと、嬉しいわ。」 そう言って笑顔でこたえた。 その笑顔に圭吾はドキリと胸を高鳴らせる。 高校当時、好きになったきっかけはこの笑顔だったことを思い出す。 堅物で全く笑わない圭吾にもこの笑顔で接してくれたのだ。 忘れる筈がない。 そうして、圭吾は光希をヒモとして迎え入れた。

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