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第8話
ある日の帰り道、光希が男と話しているのを目撃した。
見た感じ光希は嫌そうな顔をしている。
割って入ってどうにかしようと近づくと、知らない男の方が圭吾に気付く。
「お、なぁんだこいつが今の寄生先?あんたもお堅そうな格好して随分物好きだな。それともなに、こいつの事奴隷にでもしてんの?」
「だからお前には関係ないって言ってんじゃん。」
どうやら光希の以前の居候先だったらしい。
しかし、言い方は光希を一人の人間として見ていない発言であった。
矛先が圭吾に向いたことで、怒ったように言う光希に対して男は更に調子に乗ったように続ける。
「なぁあんた、こいつの事抱いただろ?こいつの身体良いよなぁ。反応も良いし締まりも良い。今夜だけで良いからさ、こいつの事貸してくんね?」
俯いてなにも言い返せなくなった光希は悔しそうに唇を噛み締めていた。
それを見た圭吾は冷たく言い放った。
「断る。貴様のような低俗に何故、原田を貸さなければならない。そもそも原田が嫌がっている時点で話は終わりだ。帰るぞ、原田。」
「あ…。」
圭吾は光希の手を掴むとツカツカと帰路についた。
後ろでは男が騒いでいたが気にせず歩く。
家に着きダイニングテーブルに二人で座り、しばらくの沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのは光希だった。
「ごめんね、変なことに巻き込んじゃって…。今までセックスしてきてこんなこと言うのもあれだけど、俺ってキモいよね。色んな男と寝てた過去があって…。」
「それは理由があったからだろ。嫌でも抱かれないといけない理由が。」
「まぁそうだね…。ヒモをさせてくれる変わりにオナホ扱いする人も居た。それでも俺はよかった…、俺には何もないから。」
そう言って寂しそうに笑った。
「気持ち悪かったら、もう俺の事抱かなくて良いよ。極力目の届かないところにいるから…。これは俺の我が儘なんだけど、言えたことじゃないし…じゃあ言うなよって話なんだけど…、俺の事、捨てないで…。」
光希の声は震えていた。
テーブルに雫が滴る。
鼻を啜る音も聞こえる。
圭吾は立ち上がりゆっくり光希の傍へ行く。
そして優しく抱き締めた。
「お前を気持ち悪いなんて思わない。お前の事を捨てるなんて考えにも至らない。お前が嫌なら抱かないが、俺は抱きたい。」
そう言うと、光希の唇を奪った。
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