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LESSONⅡ:第21話

 もしかしたら雅紀は他に好きな人がいるのかもしれない。  でもナギサのことも「好き」なのかもしれない。  その「好き」は恋ではなく「身体」が欲しいだけだったとしたらどうしたらいいのだろう。  雅紀に着ているシャツのボタンを外され、舌先で胸のあいだをなぞっている間、他の誰かを自分と同じように抱いている雅紀を嫌いだと心は叫び続けた。  嫌い、嫌い、大嫌い。  自分だけが雅紀に抱いてもらいたい。 「服で隠れているから分からなかったけれど……、こんなに白く肌が透き通っているんだなぁ」  雅紀の指先が鎖骨をなぞり、上着のなかへ手のひらがそっと入り込む。  人に触れられた経験のないナギサはくすぐったさとその先にあるもどかしい心地よさで雅紀を突き飛ばしたいほど嫌だと思っているのにひとつも抵抗できなかった。  硬い胸筋のあたりを片方の手のひらでまさぐられ、空いてるもう片方の指で着ているシャツのボタンを外された。  露わになった両胸を雅紀は目を細めて眺めた。それから満足そうにすでに尖ってしまっている胸の突起を舌先で舐める。まるで溶けて零れそうなアイスクリームを丁寧にすくうように。 「あぁんっ、いやぁっ! そ、そんなところ、舐めないで!」  指で触れられたことでさえないのに、温かい雅紀の舌先が触れるなんて予想していなかったナギサは俊敏に身体をのけぞらせた。 「まだ軽く舌を這わせただけだというのに、そんなに高い声を出して……もしかしてナギサは誰とも抱き合ったりしたことない……のか?」  二十歳を超えた男が誰かと恋愛や身体の交わりの経験がなければ驚かれてしまうのだろうか。ナギサは恥ずかしさから両手で顔を覆いながら頷いた。 「そ、そんな……う、嘘だろ」  雅紀が唇を噛んで溜息混じりに呟く姿に、ナギサは呆れられた、と胸の奥に重石が乗せられたように苦しくなる。  恋愛も知らない、誰かと身体を重ねることもどうしたらいいか分からない。  そんな面倒な人間をさすがの雅紀も嫌になったはずだ。  経験不足の不甲斐なさで雅紀に嫌われたと思い込んだナギサは覆った両手の下で涙があふれそうになる。 「……俺はこんな幸せでいいのかよ」  さきほどの強引な抱き締め方から一変して雅紀は柔らかくナギサを包み込む。 「し、しあわせ……?」  ナギサは思わず顔を覆っていた両手をどけて、雅紀の顔を見つめた。  すると頬がほんのりと紅く染まり、小刻みに震えている。 「ま、雅紀さん……?」 「いや、嬉しいんだ。大好きなナギサの初めての相手になれることが。俺、絶対にナギサは失いたくない」

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