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LESSONⅣ:第43話

「嫉妬?」 「理人の言う通りだと俺も思う。きっと碧海奏もナギサに対して嫉妬しているかもな。だから宮國雅紀の電話に勝手に出たり、今日のライブにも行きたいって言ったんじゃないか。かつて関係のあった相手の新しい恋人が弟だって知ったら、多少なりとも嫉妬すると思うぞ?」  涼太の見解を聞いた理人は意地悪な笑顔を浮かべた。 「そうだな、涼太が言うと信憑度が高まるなぁ。激しい嫉妬心をふだんは見事に隠しているくせにベッド入ると途端に俺にぶつけるもんなぁ」 「やめろっ!」と頬を赤く染めた涼太は口ごもりながら「それだけ、好きってことなんだ」と言った。  理人に聞こえていたかは分からないが、ナギサの耳にはしかと届いて勝手に胸がどきりとした。 「嫌なんだよ……。いくらナギサが相手だとしても、理人が他の男性に触れてる姿を見ることが」 「聞いたか? ナギサ? なぁ可愛いだろ、涼太って」  お腹いっぱい食事をして満たされたような笑顔を理人は浮かべた。 「……恋って、苦しいね」 「まぁな。でも恋でしか得られない栄養があると思うんだ。見て見ろ、この理人の顔を」  涼太が理人に向かって好きだと言ったわけではない。それでも相手を満たすことができる。恋は魔法のようなものかもしれない。お互いにどれだけ相手を好きかどうかを毎日計って、一喜一憂するのだから。 「好きって伝えるだけじゃないんだね」 「感情は目に見えないものだから。【偏愛音感】が示してくれなかったら、俺、きっと理人と付き合ってないと思う」  涼太が意外な言葉を口にしたとたん、理人が「そんなはずはない」と身を乗り出すとシートベルトのロックかかってしまった。 「涼太が気づかなくても、俺がぜったいに探し出してたはずだから。涼太が歌ってくれさえすれば、必ず見つける自信は生まれ変わってもあるぞ」  後部座席のシートへ鈍い音を立てて背を付けたのち、強い口調で理人は言った。 「俺には【偏愛音感】がないから、理人の自信を分かってやれないけれど、ナギサなら分かるんじゃないか?」 「そうかな……まだうまく想像ができないや」  アリーナ会場が見えてくると、ナギサは瞳を閉じて客席を思い浮かべた。  その客席のどこかに雅紀と漣音が並んでいるかもしれない。その姿だけで胸の奥が切れ味の悪いナイフで深く切り裂かれたようにじりじりと痛む。  これが嫉妬という感情なのかもしれない。  隣に並ぶのは漣音ではない、雅紀から恋人(仮ではあるが)だと言われているのはナギサ自身だ。  それを漣音に伝えたい。  そして雅紀に好き、とちゃんと言おう。  ナギサはその想いを歌に込めて届けることを誓った。  まっすぐフロントガラスの先を見つめると、アリーナ会場の駐車場の入口が見えてきた。

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