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LESSONⅤ:第52話
「……ロックミュージシャンがライブのあとに女性を抱きたくなる気持ちがなんだか分かるような気がする」
会場の目線を独り占めして気持ちが高揚したステージから一変、ただの孤独な人間に戻った瞬間はあまりにも酷だ。
気持ちよく歌えたステージの夜だからこそ、誰かに一晩中愛されたい。
たくさんの人が自分の歌を聴いて喜んでくれている姿が網膜に焼き付いて離れなかった。それに珍しく理人も褒めてくれた。
今日のライブはひときわ心の底から歌うことが気持ち良かったのだ。たくさんの歓声と拍手を浴びて視線が自分だけに向けられた時間だった。
それなのに、いまのナギサは独りだ。
もっと、もっと自分を見て欲しくて身体が疼いてしまう。
「恋人契約ってエッチも含まれるの? 嘘でも付き合っているなら……してくれるのかな」
性欲だけで雅紀との交わりを妄想することが嫌なのに、好きという感情が身体を求めるのは恋愛中のあるべき姿なのかは分からない。
それでも制御が効かないくらい、ナギサの下半身は熱を持って高ぶってしまっている。下着から硬くなったそれを取り出すと先端は真っ赤に充血しており、人差し指で触れると透明の液体で溢れていた。
まだ一度も擦っていないというのに、欲がせり上がってくる感覚があった。
母が連れて来る男たちの姿を見ながらひとりでしていた思春期以降は性欲をあまり感じず、しばらく自慰行為しない時期もあった。しかし雅紀と唇を交わしてからは欲が高まる頻度が多くなってしまった。
今夜はライブの後だからと言い訳しながら、準備万端な自分自身にナギサは従うことにした。その濡れて光る先端をゆっくりと指の腹で撫でる。
「んっ……あっ……ま、雅紀さ……ん」
透明な液体が待ち構えていたかのように零れ、潤滑油のようにぬるりと手のひらを汚す。
自分で触るだけなのにこんなに快感が強かったかと驚きながらナギサは何度も雅紀の名前を呼んで扱き続けた。
もし彼と交わるなら、中に入って欲しいと願う頭が指を後ろの穴を刺激するように指令出す。
そんな場所をいままで触れたこともないのに、勝手に指は自分からあふれた液をまとい、雅紀と繋がるための穴をくるりと刺激した。
「んっ、こ、ここに欲しいよぉ……ま、雅紀さん」
彼の名を呼びながら中へ指を挿入しようとした瞬間、ベッドの脇に置いてあるスマホが激しく鳴り響く。
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