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LESSONⅥ:第65話

「さっきは叩いてごめんね」  これからまた兄弟として時間を重ねてゆけばいい。  同じ人を好きになって、歌うことで生きていこうとしているくらい似た者同士なら世界中で最強のバディな双子になれるのではないだろうか。 「ほんとうは唇にしたいところだけど」  頬に柔らかでちょっぴり冷たい漣音の唇が触れる。 「えっ? 漣音、き、キスしたの?」  外国で暮らしているから挨拶のキスなのか、愛情表現のキスなのか分からない。  漣音の唇が触れたその場所は、ナギサにとって初めて感じる家族のぬくもりだった。 「ナギサ、キスくらいで騒がないで? これからもっと好きな人と身体を繋げるんだから。あ、そうだ。マサキさん、合鍵をちゃんと部屋に置いてきたから。こんど日本に帰ったときは、もう部屋には勝手に入らないよ」 「……あぁ、頼むよ。というのは冗談。いつだって遊びに帰ってこい。その俺よりハンサムな恋人とな」  雅紀は腕組みをしながら冷酷を捨てた微笑を浮かべて告げた。 「じゃあ、行くね」  まっすぐ搭乗口のほうへ顔を向けて漣音は歩き出す。  二、三歩進んでからふたたび彼は振り返った。 「ナギサ、ライブすごく良かったよ。あのプロデューサーさん、有名なアイドルに似ていてかっこいいね。たしか桐生ジュンだっけ」 「ありがと。理人さんに伝えとくよ」 「それからマサキさん。僕の大切な弟を泣かしたら、こんどこそ絶対に許さないからね」  漣音は舌を出して笑うと雅紀は肩をすくめて「当たり前だ」と大声で叫んだ。漣音はかすかに眉をひそめてから、前を向いて搭乗口へ消えた。

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