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LESSONⅧ:第90話
「……俺、恋人とセックスしたのは初めてだ」
唇を離すと雅紀は涙を流し続けているナギサに告げた。
どういう意味だろうか。
あんなに女性と噂があって、たくさん経験してそうだというのに。それに漣音も抱かれたと言っていた。
「いままで特定の恋人を作ってこなかったから。ナギサが初めてなんだ。俺が好きになって、手に入れて、好きになってくれて、恋人になってくれた人が」
雅紀は汗で濡れているナギサの髪を撫でながら、顔じゅうにキスをする。
「【偏愛音感】でナギサの声が聞こえたときは、舞い上がったよ。あぁ、好きになって両想いになるって心が満たされるんだなって」
首筋に雅紀が歯を立てているような気がした。
このまま彼に食べられたって構わない気さえする。
腰を掴む力が増し、さらに奥を目指すように腰を押し付けられる。
「あぁっ、すごく、お、奥に、あたってる……!」
喘ぐばかりだったナギサも初めて貫通して好きな人の一部が腹の外からでも分かり、手のひらで触れてみる。
(ほ、ほんとうにここに雅紀さんがいるんだ……)
「人を好きになるなんて、無駄だと思っていたんだ。いつかは終わりを迎えて悲しい気持ちになるなんて耐えられなかった。でも俺とナギサは違う。【偏愛音感】で聞こえ合っているから、きっと終わりがないはずなんだ。そうだろ? 脳科学者はそう言ってた。聞こえた声は、もしかすると前世からの繋がりがあった人物かもしれないって」
もしそれが本当ならば、雅紀とはこの人生が尽きてもまた出会えるかもしれない。
それは漣音とも一緒だ。
たったひとりの兄弟の声が聞こえるということは、前世から一緒だったかもしれない。そして再び出会えるかもしれない可能性がある。
「漣音の声も聞こえたんでしょ……?」
一瞬、雅紀の動きが止まる。首筋に立てた歯に力が込められて、ちくりと痛む。
「その通りだ。この先、漣音とも関係は続いていくかもしれない。だって彼はナギサのたったひとりの兄弟だろ? ナギサの大切な家族は俺にとっても大事な存在だ。それに俺が好きなのは、なんども言うが……」
噛みついた場所を優しく、強く吸われる。まるで雅紀がナギサを自分のものだと印をつけるかのように。
「俺が好きになって、恋人にしたのはナギサだけだから」
そう言って雅紀はふたたび唇を吸い、ナギサの内壁を突き上げた。
もうナギサは声を上げられる余裕はどこにもない。うっすらと見える雅紀は息を荒げて呼吸を続けていた。
ときどき「はっ、はっ」と苦しそうに喘いで真剣な表情をちらつかせている。
ライブでもこんなに汗をかかないかもしれない。
雅紀の冷酷な表情が影を潜めて、必死になりふり構わず腰を打ち付けている姿を知っているのは自分だけだろうか。ほかの抱いた人たちの前ではどんな抱き方をしてきたのだろう。
「ナギサっ、悪い、やっぱり、俺、もう、もたない……っ」
身体をぴったりとくっつけた雅紀はナギサの反り返ったままのものを握る。
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