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LESSONⅨ:第95話
ナギサは雅紀の隣で二度寝をしたあと、昼近くにふたたび目が覚めた。
奥までひとつになったあとはシャワーを一緒に浴びるようだ。
やっぱり恋人になると、抱き合ったあとはふたりでシャワーへ入りたくなる気持ちは理人が言っていたとおりだと思った。
一緒に暮らすようになってから、雅紀は朝食を作ってくれるようになった。
たぶんそれは涼太たちの部屋で過ごしたときのことを話したからだろう。
負けず嫌いな雅紀はそれまで料理をほとんどしてこなかったらしいが、自分の作った料理を食べてもらいたいから練習したと言った。
「美味しいって言われたいから、空き時間にレシピを眺めているんだぞ」
そう言いながら慣れない手つきで、玉子を割ってちょっといびつな目玉焼きができあがる。それさえも涙が滲むくらい嬉しい。きっといままで普通に受け取ることができなかった大人からの愛情を雅紀が与えてくれた。
「ありがと、雅紀さん。ボクも今度、朝ごはん作るよ」
受け取った愛は自然と相手に返したくなる。
そうやってひとつひとつ信じあって関係を深めていくことがふたりで同じ道を歩むということなのかもしれない。
「じゃあ、お互いに休みの日は一緒に作るのはどうだ?」
「いいね、なに作る? ホットケーキとか? あまーいシロップかけたいなぁ」
「よし、あとでスーパーに買い出しに行くか。次の休みのために用意しておこう」
ダイニングテーブルに向かい合う。それだけで一緒に暮らしている幸せを感じられる。
ちょっぴり焦げたトーストにバターをたっぷり塗って、ストロベリーのジャムをまんべんなく広げた。ひとくち食べるとその甘さに脳内が喜ぶのが分かる。
「んー、ジャムトーストって最高だよね」
「あぁ。でも俺にとっては、ナギサのその表情が最高なんだ」
「いつもそういうけど、ボク、どんな顔しているの?」
旅館で初めて一緒に食事をしたときも同じようなことを言っていた。変な表情をしていたら恥ずかしい。
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