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LESSONⅨ:第98話
「じゃあ、漣音はマキっていうパートナーのことが好きではないのかな」
「さぁな。それは本人にしか分からない。好きという感情がなくても付き合える人はいるだろうし」
漣音は間違いなく、雅紀のことをいまも想っている。
きっとこのマキという人物が彼に似ていることを百も承知で、わざわざナギサ宛てに写真を送ってきたのかもしれない。
双子の兄弟で同じ人を好きになってしまった。もし漣音がまだ諦めていないとしてもナギサは絶対に雅紀を手放すつもりはなかった。それにナギサ自身が雅紀以外の誰かを好きになることも考えられない。もう、ずっとずっと生まれ変わっても添い遂げる覚悟を決めたのだから。
「じゃあボクは幸せだね。雅紀さんのこと好きになれて、恋人になれたんだから」
「あぁ……たまんねぇな」
雅紀は天を仰いで、照れる。
「ナギサの初恋が俺だっていうのが信じられないな。いままで他に【偏愛音感】で聞こえた声はなかったのか?」
「いるわけないよ。雅紀さんとが、すべて初めてなの。漣音の声は聞こえていたかもしれないけれど、それは恋ではないから」
ナギサのさまざまな初めてを奪えた悦びで雅紀は震えているようだった。
こんなに自分を好きでいてくれるけれど、もし漣音が日本に帰ってきたら雅紀はどんな態度をとるのか気にならないと言ったら嘘になる。
「ねぇ、雅紀さん。漣音はマキを連れて、必ず日本に戻ってくると思うんだ。彼が負けたまま終わらないはず。ボクたちはあまりにも負けず嫌いだから」
「あぁ、俺もそんな気がする」
「そのときに確かめたい。漣音がマキの声を【偏愛音感】で聞こえているかどうかを」
「おい、それはちょっと意地悪だぞ、ナギサ。マキって人が傷つくかもしれないだろ?」
雅紀が叱るような目つきをしたので、ナギサは舌を出して「嘘だよ」とごまかした。本当は実行したい。漣音が本当は雅紀をいまだに好きだということを。それを知ったからと言って、漣音に譲るわけでないから、たしかに意地悪かもしれない。
「好きという感情だけでなく、前世の繋がりを探し出す能力、って希望もあるけれど、もし愛から逃げたかった人はこの世でも同じような思いを感じるのかな?」
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