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「ほらほら大人しくしてないと、ママさまのところに行かせてあげませんよ」 小口の顔を殴りそうになっていた時、彼女が変わらずの言い方でそう言ってきた瞬間、ぴたっと動きを止めた。 「きちんと聞けていい子ですね〜。お利口さんの子には、小口お姉ちゃんからいい子いい子してあげますねぇ」 小口が頭を撫でた途端、大河がリスのように頬をいっぱいに膨らませて怒っていた。 顔を見ずとも分かっている彼女は口角を上げていた。 面白がっている。 「姫宮さん、大丈夫でしたか? いつになく色っ──いえ、聞いたことがない声を出していらしていたので⋯⋯」 「あ、え、大丈夫です⋯⋯。⋯⋯大河が急に首辺りを嗅いできたのでびっくりして⋯⋯」 「首にっ!? まぁ、大河様なんて大胆な⋯⋯っ! 私もそうしても⋯⋯あ、ご子息の特権ですよね。さすがにでしゃばってますよね」 「あ、いえ、そんなことは⋯⋯」 つい反射でそう返したが、安野までやってきたら間近で変な声を聞かせてしまうし、大河がさらに嫌いになりそうだ。それだけは避けたい。

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