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第6話 他の使い道

「メグル殿!!」  そんな所へやって来たのは神官の一人だった。 「どうしたんですか」 「いえ、メグル殿には用がありません。私は兵長のオノルタ様に用があって参りました」  神官はバリヤへ向かって要件を告げた。 「この度、異世界人間のメグル殿を第三兵団兵長、バリヤ・オノルタ様に一任することとなりました。  メグル殿には騎士団の寮へ住んでいただきますがこちらのことは衣食住含めて何もわからないでしょうから、バリヤ様から紹介してください」 「何。私はそこまでの命は仰せつかっておりませんが」 「国王陛下直々の通達です。勇者様でなかったとはいえ、異世界からの移住者ですから何か他に使い道……使命があるやもしれぬとの結論に至りました。そこで兵長のあなたにはメグル殿の面倒を見ていただきます」  今、使い道って言った?  巡は聞き捨てならない言葉を聞いた気がしたが話はどんどん進んでいく。 「たしかに、魔力はある程度ある様子ですが」 「それではなおさらでしょう。貴方様も今回を機に戦場へ赴くのは一旦休止期間に入り、異世界人について学び、お互いに利益を得ることとしましょう。異世界人間についての報告書を定期的に提出するように」 「……了解致した」 「では、お願いしますよ。くれぐれも死なせることのないように」 「死ぬかどうかは個体ごとの才能によりますが」 「そこをあなたがどうにかするんでしょう。期待しています」  神官は去って行った。 「あのー……よろしくお願いしますね」 「黙れ」  厄介ごとを押し付けられた第三兵団の兵長は、とても機嫌が悪そうだ。  しかし巡からすれば、先ほどまでの命の心配がなくなった為、ホッと胸を撫で下ろす一件である。  異世界に来て、携帯電話も繋がらない世界で命の心配や路頭に迷う心配までしなければいけないなど最悪の事態を避けられただけでも恩の字だ。  この国では朝昼晩と、時を知らせる鐘が鳴り響く。  カーン、カーンと鳴り響いた音を聞いて巡は言った。 「お昼……食べに行きたいんですが」 「黙れ」

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