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第9話 全くやり方がわかりません
というか、実践ではあれをどう避けるのか、よもや反射神経で相殺するのだなどと言われれば25歳の運動不足の身体には無茶である。まだ二十代半ばといえど若いころと比べれば老いを感じ始めた身体で反射神経など露ほども残ってはいない。
「え~~と……、全くやり方がわかりません」
「本気でやっているか、それとも冗談か?」
眼光鋭くジロリと睨まれる。
「い、いや、本気……本気です」
嘘である。
しかし真実を行ってしまえば実践訓練場行き確定である。
「……なら仕方がない。この国では幼少の頃から魔力の扱いを身に着けていくが、異世界人だからな貴様は。できるまではこの訓練場で魔力を出す練習だ」
「ハイッ」
何とか騙せたようだ。
安堵感とこれからも騙さねばという気合によって、今までで一番の声で返事をした。
「これは護身用の魔石だ」
「え?」
バリヤが懐から取り出したのは、何か紐を編み魔石を入れたネックレスだった。
先ほど退室したのは、これを取りに行っていたようだ。
「俺が護身用の魔法をいくつかこの中に入れておいた。お前の魔力によって発動するようになっているから、魔力の流れを意識して使え。危ないときは役に立つだろう」
「あ……ありがとうございます」
「早速魔力を魔石に注いでみろ。何度使っても使用した呪文は減らない。今から俺がお前に切りかかるから自分を守るイメージで魔力を流し込め」
「え?き、切りかかるって」
「真剣ではない。峰打ちだ」
「え?いやいやいや……」
「貴様も一応剣を構えろ。では行くぞ」
「えっ……えええっ」
バリヤがこちらと距離を取り、魔力のない剣を振りかぶった。
「うわっ」
「!?」
ボウッ!!
ネックレスの防御魔法よりも先に、構えた剣に魔力が流れ込んだ。
巡の剣とバリヤの剣が交わる。
ガキンと音を立ててバリヤの剣が折れ床に落ちた。
「できるではないか!」
「は……ハイ……できちゃいましたね」
そんなバカな。
先ほどは上手く騙せてこれから一週間くらいは出来損ない作戦で粘る予定だったのに。
「魔石は使えなかったが剣が使えるなら話は早い。貴様は明日から実践訓練だ」
「そ、そんな~!!」
「なにを想像しているかは知らんが、実践訓練では魔力は使わない。全て峰打ちだ。相手の速さによっては傷を負うこともあるだろうがめったにない」
「ソウダッタンデスカ」
とはいえ痛いのもごめんである。
防衛意識から、遅れてバリアの魔法陣が巡を包み込んだ。
「魔石も使えている。実践だ」
「そんなぁ……」
実践だおじさんと化したスライムと、25歳の人間の声が部屋にこだました。
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