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第15話 懐中魔法陣

 道端や絶壁で煌めく石をツルハシでキンコンカンとやり始めて数刻。 「いや強ッ……」  巡はバリヤの実力を侮っていた。  剣に纏った魔力で現れる魔獣をズバズバと切り捨て、明らかに自分と同種であろうスライムなどもサクッと消し去っていくバリヤに開いた口が塞がらない。  しかも、魔法で人間に変身しているはずなのにそのうえでまだ魔法を詠唱して戦うのである。ほとんど無敵と言っても過言ではない。本当にスライムなのかどうかも疑わしい。  巡はといえば道の端に寄ったり、光る魔石周辺をウロウロしてはツルハシでひたすら石を掘り出す作業である。  バリヤが強すぎるせいでウロウロしても特に危険にさらされることなく採掘を続けている。  それに以前渡された護身用のネックレスの存在もあり、初めて見る魔獣やモンスターたちに臆することなく巡の心を支えていた。  と、キンと音を立てて割れた石を拾い、中に何かが入っているのを見つけてミウェンに声をかける。 「あの、これ……」 「まあ、珍しいものを発見なさいましたね」  なんだとバリヤも戦闘を中断してこちらを見に来る。 「これは……魔道具だな。魔石には貴様に渡したように魔法を入れておいたり、アイテムを入れておくことができる。  ただし魔力が無いと使えないし取り出せないが。  これも魔力を流せば取り出せるように魔石の中に入れられた魔道具だ」 「なんの魔道具なんですか?」 「ザックに聞いてみないとわからない。コレは貴様が持っておけ。貴様の功績だ」 「あ……ありがとうございます!」  レアもの発見である。  嬉しくなってはしゃぐ巡に、ミウェンも嬉しそうに微笑んだ。 「さあ、このくらい採掘すればもう十分なのではないでしょうか」  ミウェンの言葉を合図にしたかのように、巡とミウェンの肩一杯にぶら下げた袋をバリヤが見た。 「これだけあれば当分持つだろう。引き上げよう」  昼の鐘を過ぎて城下町を戻った一行は、魔石になる前の結晶と共に例の魔道具の入った結晶をザックに渡した。 「これは……」 「はい……」 「一体何だろう?」  はて?とザックは手にした魔道具を見回しながら首を傾げた。  懐中時計のような作りになっており、盤面には魔法陣が描かれている。  ザックが盤面に手を当て魔力を流し込むと、魔法陣がピカッと光り、そして消えた。 「魔法陣は、キュア魔法の物だね。傷を癒したり体力を回復させるのに使うよ」 「そうなんですね」 「え?ミウェンさんも知らなかったんですか?」 「はい。魔法は大抵詠唱で覚えますから、魔法陣のことまでわかるのは魔導士ぐらいのものですよ」 「でもこれ、ただの魔法陣じゃない……空っぽの魔石が背面にくっついてる」  懐中魔法陣の背面は、形に合うように磨かれた魔石になる前の結晶で作られているらしい。 「多分魔石をくっつけたかったけど、間に合わせの殻で作ったんだろうね。  この石の部分に魔力を注ぎ込んでおけば……」  ザックは懐中魔法陣を巡に渡した。 「メグル、肘のとこ、少し怪我してる」 「あ、本当だ。採掘の時にどこかに当たったのかな」 「じゃ、この魔法陣を使ってみて」 「え、俺魔法なんか使えませんけど……」 「いや、使えるはずだ。……ほら」  懐中魔法陣の盤面がピカッと光り、巡の怪我がスウッと塞がっていく。 「まあ、これは便利ですね」  ミウェンが手を合わせて目を輝かせた。 「魔法が使えない平民でも、魔力をこの石に込めれば怪我が直せるように作られたんじゃないかな。  これを作ったのは魔導士だろうけど……、採掘をする平民のために結晶の中に入れておいたんじゃないかな。  これはメグルが持っておくと良いよ」 「わあ……ありがとうございます!」 「これでメグルも魔法が使えるようになったね」 「凄い……!嬉しいです!」 「うんうん」  巡は キュア魔法 を覚えた!!  レベルアップの音源でも流れそうな雰囲気であった。

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