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第25話 異世界人の研究

「じゃあ案内しますね。行きましょうか」  くるりと踵を返したときだった。 「ちょっとごめんねー。君たち、異世界人と側役の神官だよね」 「ザックの魔力の受け皿をやってるっていう」  魔導士のローブを着た人物が3人、現れた。 「なんですか、あなた達は」  ミウェンの質問をよそに、魔導士はミウェンと巡の肩に腕を回し、通り道をふさいだ。 「異世界人の研究はザックの専売特許みたいになってるけどさ、俺たちの研究にも貢献してほしいんだよ。  ちょっとだけでいいんだ。魔力の研究や異世界人の生態について詳しく知りたいだけなんだよ」 「異世界人の研究ですか?」  少し興味を示したミウェンに対して、それはちょっとまずいと慌てたのは巡である。  ザックからの魔力の受け渡しでは少しだけだった為、手を繋ぐ程度で済んだ。しかし前回のような魔力の受け渡しでは何をされるかわかったもんではない。 「いや、それはちょっと、バリヤさんが居ないと……」 「バリヤ?第三兵団の兵長か。ザックのスライムの」 「なんでここでバリヤ殿が出てくるんだ」 「バリヤ様は国王様の命で直々にメグル殿をお守りする仕事をされています」  ミウェンが解説するが、今一つ巡を守っている理由からずれている。 「バリヤ殿が居なくても、研究に協力してくれるだけでいい。俺たちだってザックに功績をあげられてばかりじゃ魔導士として成果が出ないからこうして頼んでいるだけで、何も傷つけようってわけじゃない」 「研究報告じゃ異世界人は魔力の拒絶反応が無いっていうじゃないか。だったら大丈夫だよ」  いや、何も大丈夫ではない。  第三兵団に居ては命の危険に晒されるからザックの力で魔力の受け皿にしてもらったのに、まさか研究成果の対象として狙われる羽目になるとは。 「いえ、あの、ではザックさんが帰って来てから一緒に研究を」 「それじゃあ意味がないんだよ。俺たちだけでやらないと、魔導士ってのは魔法が使えて魔力量が多いだけじゃ務まらないんだ。君たち神官なんかに言ってもわからないだろうけど、ザックが居ない今しか俺たちにチャンスは無いんだよ。だからちょっとだけ協力してほしいってだけなんだけど」 「俺たちの言ってること、わかるかな?」 「いえ、ザックさんとバリヤさんが居ればいくらでも協力しますから」 「だからそれじゃあ意味が無いんだって。わからない奴だな」 「俺たち魔導士は日々競争なんだよ。そんな中で異世界人間をザックに独り占めにされちゃあこっちが困るってんだよ」 「ザックの奴はこの世界で一番の大国であるこの国アルストリウルスでも一番の魔力量を持ってる。それだけでも俺たちとは差がついてるのに、勇者との遠征までザックに指名されて、これ以上何をザックに与えようっていうんだよ。俺たちにも協力してくれよ。君はじっとしてくれればそれでいいから」 「もういい。連れていけ!!」  肩を抱いていた腕はいつの間にか二人の両腕を捻り上げ、ミウェンと巡は魔導士たちの部屋へと連れ込まれた。  ザックの部屋と変わり映えしない、数々の魔導書、部屋の床の魔法陣、実験に使われているであろう試験管などがごった返す部屋にドッと押し込まれる。 「側役の方は、適当に縛っとけ」 「ああ」  ミウェンの腕が麻紐できつく縛られた。 「やめなさい、こんなこと!メグル殿の身に何かあれば処罰を受けるのはあなた方ですよ!」 「うるせえな、こいつは。そんなことしないって俺たちは言ってるだろ」  ミウェンの口にグッと猿轡が噛まされた。  ウーッと唸るミウェンだが、床にごろんと転がされた。

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