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第27話 寝たふりくらいは
「じゃあ布団を俺の部屋から運んでおきましょうか」
巡の配慮に、バリヤは答えた。
「心配ない。俺はスライムだ。人型のまま寝ることも無ければ、睡眠が何かもよくわからない。ベッドは使っていない。お前が使え」
こんなことでスライムを実感するとは。
バリヤは睡眠を取らないらしい。そして、スライムとしてはそれは普通のことらしかった。
そしてバリヤは、先日のことを思い出したのか、ふと呟いた。
「……貴様が一人で寝ないというなら、一緒に寝たふりくらいはできる」
「そんなこと言ってません!」
これもバリヤの人間の知識のひとつなのだろうか。
人間は共に寝る。快楽を共にするような仲であればなおさら。
しかし巡とバリヤはまだそんな仲でもなければ先日巡が告白しただけで終わってしまった仲でもあった。
この堅物のスライムが、自分にキスをする日など来るのだろうか。
いや、そうとはとても思えなかった。
「俺は一人で寝ますが……バリヤさんはその間何を?」
「魔法の練習をしたり、魔力のコントロールを訓練したり本を読んだり……色々だ。人間は寝なければ学習できないが、スライムはその分空き時間が多い。たった一年で兵長になれたのも俺がスライムだからだ」
スライムが魔法の練習をしたり、本など読んで勉強をしていることの方が普通はおかしいのだが、バリヤは人間に変身しているからか妙に納得がいった。
国一番の魔導士であるザックが持ち帰ってきたスライムだからこそ、優秀に育ったのであろうことも想像に難くなかった。
「そういえば、ザックさんがバリヤさんに魔法を教えてもらえと言っていましたよね。俺も、教えてほしいです」
「そうですね。今回のようなことが他にもあれば大変ですから、単純な攻撃魔法か剣術を身につけなさった方がよろしいかと」
巡がそういえばと、先日のザックの言葉をバリヤに伝え、ミウェンも同意した。
剣術は怖いのでなるべく避けたいが、今日バリヤが剣ひとつで魔導士たちを圧倒した後ではそれは言い出せなかった。
自分の身を自分で守ることもできず、バリヤを召喚する機会を伺っていただけの自分では剣術を避けたいなどと甘えた考えを口にするのははばかられたからだ。
「そうだな。元々メグルが第三兵団に派遣されたときは、メグルに付いて訓練をする手筈だったからな。今日にでも副兵長を立てて上に何とかなるか聞いてみよう」
「ありがとうございます。それにも、俺達は付いて行くんですか?」
「当然だ」
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