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第31話 バリヤと寝たんだって?
「ただいま~!!」
「旅行明けみたいなテンションですね」
ザックが戻ってきた。
「バリヤと寝たんだって?」
「語弊がある!!」
開口一番これである。
寝たのは寝たが、本当に眠っただけである。
「というかバリヤさん、なんで言っちゃうんですか!」
「問題になるようなことはしていない」
「まぎれもない事実!!」
「ザック様、遠征お疲れさまでした」
ミウェンの一声を皮切りに、バリヤと巡もザックに向き直った。
「勇者凄かったよ!一瞬で瘴気が浄化されてさ!僕も当てられてなんだか心が綺麗になっちゃったよ」
「心が綺麗な人が言うセリフがさっきのですか!?」
驚きである。
それに、勇者の力が他者に影響を及ぼすほどのものだったということも驚きの一つだった。
「勇者って本当に凄いんですね」
「そうだね。瘴気の浄化は何度か行わないといけないかと思ってたけど一瞬で片が付いたし、魔獣やモンスターたちと出会っても物おじせず退治して……魔法は使えないみたいだったけど魔力はとっても大きくて、物凄く強かったよ。
魔物と戦いながら生活してたんだって。
メグルとは別の世界から来たみたい」
「見た目も名前も俺の居たとことは大分違いますし、まあそうですよね」
「でもこれで、メグルのこともよくわかってきたね」
「え?」
「僕たちと違って魔力の拒絶反応が無い、異世界の魔力を持った人間。
魔法が無い世界から来た。
勇者とも違う世界から来た。
それだけでも十分にメグルの事が知れたと思うよ。本当は人体実験なんかをやりたいところだけど……、死んじゃうかもしれないから、外からの情報だけでこうやってメグルのことがいっぱい知れたらそれが一番だよね?」
「あ……はい」
なんとなく、ザックから優しさのようなものを受け取った気がした。
昨日巡とミウェンを捕らえ研究に協力させようとした魔導士たちとザックとでは、少し違うのかもしれない。
「あっ、そうだ」
巡は思い出したかのようにハッとした。
「こ……コンニチワ」
「あれ?」
「これは……」
「アルストリウルス語だ」
ザックが首を捻り、ミウェンが呟き、バリヤが答えを口にした。
アルストリウルスはこの世界で一番大きな国だ。
一つの国の中でも沢山の言語があるらしいが、首都で話されているアルストリウルス語の挨拶を、昨日巡は覚えたのだ。
「すごい!いつも話している感覚と全然違う!どうしてこの国の言葉を話せるんだい?」
バリヤが昨日あったいきさつをザックに話した。
ザックのライバルの魔導士たちに連れ去られたこと。
バリヤは第三兵団の仕事があること。
巡が魔法を覚えるためにアルストリウルスの言語を勉強しなければならないこと。
「なるほど……。たしかにメグルも勇者も、違う世界から来たというわりに最初から会話ができたもんなぁ。
じゃあこの世界に何の力が働いて翻訳されているんだろう」
研究モードに入ろうとするザックに、巡は待ったをかける。
「何故なのかはわかりませんが……、俺が魔法を覚えるのにかなり時間がかかりそうなので、一つ問題があります」
「えっ?」
「なんだい?」
キョトンとするミウェンとザック。
「俺が……またいつどこで他の世界に召喚されるかもわからないってことです。
一度目は、バリヤさんが守ってくれました。でも、これから先また召喚されそうになった時に、俺は魔法で自衛ができないんです」
「魔法かぁ……そうだよね」
「あの時はこの世界の召喚魔法を不完全な状態で重ね掛けした。結果何も召喚されることなくメグルは助かった」
バリヤの解説に、う~んとザックは悩む。
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