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第38話 試合開始
「メグル殿の魔石の中にはバリヤ様が防御魔法を沢山入れてくださっているのですよね?」
「はい。俺自身は魔法を使えませんが、魔石に魔力を流すと魔法が出てきます」
「では今日も巻き添えになりそうでしたらその魔石をお使いになられると良いと思いますよ。採掘で見つけた魔道具の魔法陣にはキュア魔法が描かれているようでしたから、メグル殿は神官と同等の事がもう十分できますよ」
バリヤが居なくても最低限の救済はもう身に着けていたということだ。
「俺も、神官の皆さんみたいにやれますかね?」
「それはこれから、試合が始まってみてからでないとわかりません。気を抜かずに、目を離さないでくださいね」
「はい。ミウェンさんも、無事で」
「ええ。いざとなったらこのミウェンがバリア魔法もキュア魔法も駆使して見せますから、ご安心ください」
そこへザックが合流した。
「君たち、ここで見るのかい?バリア魔法の魔法陣を地面に描いておいてあげるよ」
ザリザリとザックは地面に魔法陣を描いていく。
ミウェンと巡、ザックはその魔法陣の中に入った。
「こうすればこの中に居れば安全だよ。でも魔法陣のどこかが砂嵐なんかで消えちゃうと魔法が効かなくなっちゃうから、早めに逃げてね」
バリヤとアノマの試合はもうじき始まるようだった。
審判の神官が二人の間で片腕を上げる。
「正々堂々と、逃げも隠れもせず戦うことをここに誓って」
審判の言葉に、バリヤとアノマが互いに礼をする。
「用意、始め」
審判が号令を発した瞬間、バリヤが飛び上がりアノマから距離をとった。
お互いに剣に魔力を宿し、魔剣を振りかざす。
バリヤが魔力の刃でアノマを切り付け、アノマは刃をするすると避けた。
バリヤとの距離を縮めるアノマ。
魔法を詠唱しだしたバリヤは後ろに飛びのきながらアノマとの距離をとっていく。
水魔法の水の渦がアノマに迫る。
アノマはバリアを張って水魔法を防御した。
火魔法がボウッと地面を伝ってアノマの方へと向かっていく。追跡され、バリヤの方に向かっていたアノマは火を避けて一歩下がった。
水魔法でバリヤの火を鎮火する。
間髪入れずに魔力の刃をヒュンヒュンと飛ばすバリヤ。
それも難なく避けるアノマ。
避けながら距離を詰めるアノマは土魔法でバリヤの後ろに地面から壁を作りバリヤの行き場をなくした。
「魔力量からして、そうそう遠くから攻撃できないもんでね」
距離を詰めたアノマが魔力を宿した剣でバリヤを切りつける。
バリヤも剣で応戦し、互いの刃を交えた。
ガキンと刃と刃がぶつかる音がする。
暫くキン、キンと刃のぶつかる音がしていたがバリヤが壁を横へ抜けて脱出した。
追いかけようとするアノマの前に土魔法で壁を作り足止めをする。
アノマは一瞬で壁を切り崩して追いかけた。
また後ろへ飛ぼうとするバリヤを風魔法で自分の方へとアノマは運んだ。
ビュウビュウと風に飛ばされる途中でもバリヤは魔力の刃でアノマを切り付け続け、アノマはそれを避け続けた。
しかし球数が多くなり避けきれなかった分が頬をかすめ、血が滲んだ。
再び距離を詰めたアノマは風魔法にバリヤを巻き込みながらも魔力を宿した剣を突き出していく。
バリヤはといえば竜巻のような風魔法に巻き込まれて上手く体が動かせない。
そこにアノマが剣でズバッと上から下まで切りつけた。
ギャラリーがおおっと声をあげる。
と、切り付けられたバリヤがベロンと二つに分裂した。断面がスライムだ。
人型の切り付けられた太刀筋のまま二つに分裂しているのでいささか不気味なビジュアルだが、人間に変身しているとはいえ攻撃されるとスライムらしい。
「き……気持ちわるッ」
「バケモンじゃねーか!!」
客席からの野次が飛ぶ。
二つに分裂してしまったので一人の時より小柄にはなるが、バリヤは変身魔法を使いそれぞれきちんと二人に変身しなおした。
「バ……バリヤ兵長が二人!!」
「そんなのアリかよ!!」
ギャラリーが騒いだ。
「アリに決まってる!分裂しちゃいけないってルールはないよ!」
盛り上がるザック。
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