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第40話 副兵長
勇者の騎士団長就任式はバリヤとアノマの決戦の次の日にはもう行われた。
第一兵団から第三兵団まで全ての騎士たちが整列し、魔導士たち、神官たちも合わせてずらっと並んでいた。
バリヤは第三兵団の先頭に、ザックは魔導士たちの中に、巡とミウェンは神官たちの中に紛れて整列をしていた。
アノマは第三兵団所属となり、一端の騎士として国に仕えることになる。
国王が勇者の前に大きな椅子を構え、どっしりと座っている。
「タント・ダイカーを騎士団長に任命する」
国王の命令に勇者が小さく敬礼する。
ウオオオと会場で歓声が上がった。
「前騎士団長は騎士団長の印をタント・ダイカーへ授与せよ」
アノマが自分の胸元に付けていた勲章のバッヂを勇者の胸元に付け替える。
またしても会場で歓声が上がった。
「アノマ・コペンよ。今までの功績、ご苦労であった。これからは第三兵団の一員として精を出したまえ」
「ありがたく存じます」
そこで声をあげたのはバリヤだった。
「国王様、提案がございます」
「申してみよ」
ざわつく会場の中で、バリヤは先日却下された案を国王に聞かせた。
「私バリヤ・オノルタは、魔導士ザック・オノルタの魔力の器であるメグルの護衛をしております。兼任する中では第三兵団の兵長として任務が全うできない時もあるでしょう。そこで、アノマ・コペン氏を第三兵団の副兵長に任命したいと考えております」
「副兵長か」
「はい。ぜひご了承願いたい」
「よし、では前騎士団長アノマ・コペンよ、第三兵団の副兵長として任務を全うするように」
本来アルストリウルスに副兵長という役職は無い。前代未聞の提案に、会場はシンとしていたが、一度決定するとまたしても歓声が溢れた。
国王の側近が「そんな、軽率に……!」などと慌てているが、国王はアノマが副兵長になることに不満は無いようだった。
就任式が終わると、バリヤの元にザック、ミウェンと共に巡は身を寄せた。
「バリヤ、初めからこうするつもりだったのかい」
「ああ。兵長を辞めるつもりはないが第三兵団に付ききりではメグルを守れない。メグルの傍に居るためだ」
昨日、アノマに勝ったバリヤは巡にキスをした。
巡のことを好きになったらしてくれと頼んでいたキス。
バリヤは本格的に巡の護衛としての役割を果たすつもりらしかった。
「それは、立派ですね」
突然背後から声がした。
振り向くとそこにはエルフのザック同様耳の尖がった青年が立っていた。
「エクストレイル」
ザックが呟く。
「誰だ」
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