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第42話 貴方こそが相応しい

「先程バリヤ様に掛けた魔法は召喚魔法ではありません。ただの移転魔法です。余計な副産物も付いてきましたが……」 「副産物て」  確実に巡のことである。  エクストレイルは更に続けた。 「貴族として魔王城での仕事はあるものの、魔界は大きな、深刻な問題を抱えていました。  それがなんだかお分かりですか?」 「……」  答えがわからず黙りこくるバリヤと巡。  構わずにエクストレイルは続けた。   「魔界にはここ数十年は、魔王様がいらっしゃらないのです。僕が生まれる前からのことなので、もうどれくらいいらっしゃらないのかはわかりませんが……」 「そ……そういえば、バリヤさんも以前この世界に魔王はいないって言ってましたよね?」 「……ああ」 「そうなのです。魔界を整備するために貴族たちは魔王城で働き続けているのに、肝心の魔王様がいらっしゃらないのです。  それでも今まではどうにか世の中も回ってきました。  しかし最近は瘴気の浸食を抑えられず、結果的に世界は勇者召喚に踏み切りました。  瘴気の浸食をコントロールするのも、魔界の統率をとるのも魔王様のお役目ですが、なにぶんいらっしゃらないものですから」   「……それでなぜ俺達がこんなところへ連れてこられた」  バリヤが不機嫌そうにエクストレイルへ聞く。   「いえ、お連れしたかったのはバリヤ様のみですが」 「それはどうでもいい。理由だけ教えろ。俺はメグルの傍にも居なければならないがザックの傍にも居なければならない」  そう、魔力の器であるのは巡のみでなく、バリヤもそうなのだった。  ザックからは先日試合前に半分も魔力を受け取ったばかりなのでまだ魔力暴走の心配はないだろうが、それでも魔力の器として心配なのだろう。  ザックの魔力が回復する前にここから元居た場所へと帰らなければならなかった。   「アノマ様とのご試合、拝見いたしました。そして、スライムという魔界の生き物であるバリヤ様だからこそ、やっていただきたい。  バリヤ様、貴方こそが我らが魔王に相応しい」 「くだらん」  バリヤはエクストレイルを一蹴した。 「メグル、戻るぞ。元の世界に戻る方法はないが移転魔法なら俺も使える。ザックの元へ戻るぞ」 「あ……は、はい」 「ちょ、ちょっと待ってください!!」  慌てたのはエクストレイルである。  バリヤを魔王にするために魔王城に連れてきたのだから引き止めて当然なのだが、あまりにも帰ろうとするのが早すぎた。   「魔王とは、悪事を働くためにいるわけでは無いのです。  先程も言った通り、瘴気のコントロールや魔界の統率、魔族を守ることなどが魔王様のお仕事です。  なにも第三兵団の兵長を辞めてほしいと頼んでいるわけではありません。  兼業で良いのです。兼業で魔王様をやっていただけませんか!?  それほどまでに貴方は強い!貴方にしか頼めません」   「さっきから魔王魔王と嘯いているが……、なぜ貴様にその決定権がある。  魔王など貴様のような個人が勝手に決められるものではないだろう」   「いえ、僕個人が決めたことではありません」 「何」  部屋の扉がギイイーッと音を立てて開いた。   「ウワッ」  ドサドサッと音を立てて何やら人が崩れ落ちた。   「お前たち……聞き耳を立てていたのか」 「だって~~、エクスが覗かれたら怒るんじゃないかと思って、それで」  驚いた様子のエクストレイルに答えたのはいやに露出の激しい女の子だった。   「痛い!!退いてくれ」 「俺だって重てーよ、誰だ上に乗ってんの」 「失礼ね!アタシよ!!」

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