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第43話 魔界の貴族

 オークと思わしき緑の肌の大男と、耳と尻尾の生えた狼男、そして露出の激しいボンキュッボンの体形をしたサキュバスがドアの向こうから一斉になだれ込んできた。  エクストレイルは呆れたようにハアとため息をついたが、次の瞬間にはバリヤに向き直った。   「彼らは魔王城に仕える貴族の仲間たちです。  仲間と共に貴方を魔王にすることに決めました。  今回勇者を召喚するところまで行って初めて僕らは、魔王がいないことで世界に迷惑をかけていることに気が付いたんです。  貴方には知能も剣術も魔力も全てが備わっている。スライムだって構わない。  ただ魔王になってほしいだけなんです。そして世界へ悪影響を及ぼさないように魔界を統率してほしいのです」   「世界に悪影響を及ぼさないように……」  巡が反復して呟いた。    魔王と言えば、勇者と対峙して世界を悪に陥れる極悪な印象を持っていた。  が、エクストレイルの話によれば魔王は魔界を統率し世界との均衡を保つ存在とでも言おうか、なかなか居なくては困る存在のようだった。   「バリヤさん……」 「なんだ」 「バリヤさんは、ザックさんの傍に居ないとザックさんが魔力暴走を起こして魔王にでもなってしまうんですよね?」 「そうだ。だから俺はザックの魔力の器として魔力を喰っている。メグルもそれに一役買っている」 「バリヤさんは、自分が魔王になるのとザックさんが魔王になるのだったらどっちがいいと思うんですか?」 「は?」 「いや……どうせどっちかが魔王になるなら、ご自分で決められた方が良いかなと」 「どっちも魔王にはならないという選択肢はないのか」 「でも、とっても困ってそうですよ。それにここ、異世界じゃないっていうし。俺、居るなら平和な世界に住みたいんです」 「メグル……」  巡はエクストレイルの話を聞いているうちにザックかバリヤのどちらかが魔王になるのだと思うようになった。  なぜなら魔王は悪者ではない。  RPGの世界ならいざ知らず、この世界ではともかくそうなのだろう。   「帰るぞ」 「えッッ」  バリヤは巡を腕の中に抱えた。 「待ってください!バリヤ様、いや魔王様!!僕たちを見捨てるんですか!?」 「知らん」 「魔王様がいないと人間の世界へ悪影響が出てしまうんです!!」 「貴様らのうちの誰かが魔王になれば良い」 「そのような器の持ち主はここにはおりません!生まれてこの方、ずっと魔王城にお仕えしてきたんです。魔王様の誕生を願いながら!!  やっと見つけた魔王様の器たりえるスライム……バリヤ様が良いのです!!」 「では聞くが」  バリヤは巡を抱えたままエクストレイルに向き直った。   「俺は魔力を補給しなければ今のように高い魔力を保つことはできない。  それは貴族との大きな違いだ。  魔力量が貴族を下回ることがあっても誰も何も不満を持たずただのスライムに付いて行くことができるか?  貴族である貴様らだけでなく、魔界に居る魔族やモンスター全員がだ」

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