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第44話 命令するよ

「そ、それは……」 「魔力暴走を起こしたザックが魔王になるのは駄目なのか」 「理性のない魔王様はちょっと……。バリヤ様の方がザック様より魔王に適任であると判断した次第です」 「そうか」  バリヤは一旦考えるそぶりを見せたが、首を縦には振らなかった。   「一旦持ち帰ってザックに相談してみよう。それでは駄目か」 「ま、待っ……」 「駄目ならこの話は終わりだ」 「いえ、ぜひご相談を!!」  かくしてバリヤと巡は一度ザックの元へ帰ることとなった。   「ちょっと、簡単に返しちゃって大丈夫なの?もう来ないつもりかも……」 「大丈夫だよ、僕が付いて行く」  サキュバスの言葉にエクストレイルが答える。 「任せたぞ、エクストレイル」 「いい結果を待ってるぜ」  オークと狼男もそれに続いた。    巡とバリヤはバリヤの移転魔法により就任式が行われた会場へ再び戻ってきた。    もうその場には人っ子一人残っておらず、取り敢えずザックの部屋へ向かうことにする。  そうするとザックの部屋にはミウェンとザックが二人で待っていた。   「魔王!?やりたいやりたいやりた~~い!!!」  先程の話を聞いたザックの反応はこれだった。   「正気か貴様」  バリヤの冷静な言葉にもめげずにザックは好奇心旺盛に答えた。   「うん。魔王になれるならなってみたいよ。世界の理に反するから、魔力暴走を起こさないように努めてきたけど、勇者に退治されちゃうような存在じゃないならなりたいな。  だって僕って魔力が大きすぎるし、世界の役に立てるならそれでいいじゃないか」    どうも釈然としないバリヤにザックはなおも畳みかける。   「それに、魔王になったらその地位を使って色んな魔族を生態研究できるんじゃないかな。僕、研究の為なら魔王になっても良いって思うよ」 「却下だ。貴様は悪意はないかもしれないが思想が邪悪すぎる」 「じゃあバリヤが魔王になりなよ!!僕は魔王の持ち主として魔界で研究させてもらうよ」 「……!!」  ザックは無邪気で悪意は無いのだが、なんだか危険思想なのだ。  魔王になろうがならまいが、魔界の生物の研究をしたいという純粋で大きな欲を感じる。   「ザック。いくら魔族やモンスターが相手でも奴らも生きている。そんなことの為に俺に魔王になれというのか」 「そうだよ。それに、話を聞く限り、僕かバリヤが魔王にならないと魔界の瘴気のコントロールだってまだできないんでしょ。  僕らのうちのどっちかが魔王になって魔界も人間の世界も助かるなら、魔王になるべきだよ」 「俺はザックの傍から離れられない。メグルとも離れたくない。第三兵団のこともある」 「兼業で良いんでしょ?度々こっちにも戻ってきなよ。僕も魔力が溜まると困るし。第三兵団にはアノマさんが副兵長として居るじゃないか」 「メグルはどうする」 「連れていきなよ。恋人なんでしょ」    応酬のあと、ザックはバリヤに何の悪気もなく言い放った。   「バリヤ、君の持ち主として命令するよ。君、魔王になりなよ」

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